2006-01-01から1年間の記事一覧

「野性時代」11月号(10月12日発売)

「魔風邪恋風邪」 偏屈ラブコメ完結編 風邪をひいた男 「しかし、そこまで徹底して考えろと言うのならば、男女はいったい、如何にして付き合い始めるのであろうか。諸君の求めるが如き、恋愛の純粋な開幕は所詮不可能事ではないのか。あらゆる要素を検討して…

登美彦氏、ハチクロにサヨナラをする

森見登美彦氏は「ハチミツとクローバー」の最終巻を読み終わった。 感想を聞かれた登美彦氏は、「じつに美しいマンガだ」と述べて、宙を睨んだ。 しばし、沈黙があった。 やがて登美彦氏は拳を握り、「でも納得できん!やっぱり納得できんよ!」と呻いた。な…

登美彦氏、サヨナラをする

森見登美彦氏は、一年以上にわたって書いていた連作とようやく縁を切ることに成功した。 「サヨナラ!サヨナラ!」 登美彦氏は波止場に立って白いハンカチを振り、去りゆく船を見送った。 別離の哀しみに涙が溢れるよりも前に、ようやく終わったと溜息が溢れ…

登美彦氏、ぽつんと思う

森見登美彦氏は、殺伐としたTシャツと、なんだか正体のよく分からないだるだるのズボンで寝るのに飽き飽きして、パジャマが欲しくなった。 「パジャマパーティしてえ」 登美彦氏は呟いた。「一人で」 登美彦氏はパジャマパーティの定義を良く知らない。 い…

 登美彦氏動向(9/16)

▲登美彦氏は一年にわたって粛々と書いていた作品(A)の最終回を、「エイッ」と編集者へ放り投げた。まだ「おしまい!」と宣言してカルピスを飲むことは許されない。これから書き直さねばならないからである。 ▲登美彦氏は作品(A)を放り投げた後、間髪入…

登美彦氏、サヨナラの支度をする

森見登美彦氏は、昨年春より書いていた某雑誌の連作の最終話を、鳩サブレ(先日、編集者より贈られたもの)を栄養源にして書き続けており、あと数日で書き終える模様である。登美彦氏の情熱的な夏の大半は、この作品へ捧げられた。 登美彦氏はいつでもこの作…

登美彦氏、悟る

森見登美彦氏は冷たい雨が降りしきる夜の町を、住まいに向かってとぼとぼと歩いていたが、ふいに立ち止まり、呆然と辺りを見回した。 夜の路地裏はひっそりとしていた。ぽつぽつと灯る街灯の投げかける光が、濡れた路面を照らしている。肌寒い風が登美彦氏の…

「野性時代」10月号(9月12日発売)

「御都合主義者かく語りき」 追う男。 「学園祭というただでさえ荒れ狂う大舞台において、我々はてんで勝手に大団円を求め、無闇やたらと迷走する。やがて我々をとらえるのは、「とにかく幕を引こう―ただしなるべく己に有利なかたちで」という手前勝手な執念…

登美彦氏、秘密裡に活動する

森見登美彦氏は、無用の苦難に敢えて耐え、ひとまわり大きな自分になるために「一人ハチクロ」へ挑んだ。だがしかし、そういったことを日誌にて報告すると、氏がそうやって机から離れることを憂う関係者から「サボっちゃいかんよ、コノヤロウ」という矢文が…

登美彦氏、「一人ハチクロ」に耐える

森見登美彦氏は机に向かっているのに飽き飽きしたので、映画を観に行くことにした。 先日の昼休み、登美彦氏は同僚から借りた「ハチミツとクローバー」を読んだ。そして「はぐちゃんがえらいことになっとるがな!」と、喫煙ルームでちょいと唸った。 登美彦…

登美彦氏、先斗町で鱧を喰らう

編集者の古囃子氏が京都へ乗り込んできたので、登美彦氏は会いに行った。 なぜ古囃子氏が京都へやって来たかというと、登美彦氏が「小生にはたくさん書きためることなんかできない。ダメぜったい」とワガママを言うたからである。登美彦氏は都合の良い時だけ…

登美彦氏、ふたたび立つ

森見登美彦氏はふたたび読書感想文二十年分の大作に取りかからねばならぬ。 そういうわけで登美彦氏は、愛飲するリポビタンDを飲む飲む。氏は大正製薬のリポビタンDをこよなく愛する正義の人である。 元気が出そうな味のリポビタンを飲みながら、登美彦氏…

登美彦氏、いちゃもんをつけられる

先日の五山送り火の宵、登美彦氏のまわりには浴衣姿の美女が群れ集い、古今未曾有のモテモテぶりであった。 上は事実に反すると、登美彦氏の戦友が主張した。 「そうじゃないだろ。あんた、俺と一緒にいたではないか!和歌山から来たあんたの屈強な弟と、俺…

登美彦氏、夏を満喫

「夏」は満喫せねばならないものである。 これは、この世に生まれて今年も無事に夏を迎えることができた人間の義務である。満喫せねばならないのである。 己が無能が原因で多忙を極め、「疑似売れッ子状態」になっている登美彦氏であっても、同じことだ。 登…

幻冬舎「パピルス」8号(8月28日発売予定)

「金曜倶楽部」 京都には、大正時代から続くという秘密結社がある。 その設立目的は謎に包まれているが、案外ただの仲良しグループだと言う人もいる。その席数はつねに七つと定められ、各座を占める人間たちは、それぞれ七福神の名をもって呼ばれた。ひと月…

登美彦氏、原稿を捨てて街へ出る

己が無能に起因するインポッシブルなミッションに苦しんできた森見登美彦氏が、映画館へ入って「ミッション・インポッシブル3」を観ると、映画の中ではトム・クルーズがマジでインポッシブルなミッションに苦しんでいた。 「彼に比べれば私のミッションなど…

登美彦氏、夏休みを満喫する

森見登美彦氏は以下のような夏休みの一日を過ごしたという。 ■10:00 地下室にて覚醒する。雨が降っていることに気づく。 スパゲティを茹でる。 ■10:30 珈琲を飲みながら、机に向かってうにうにする。 かつて掲載された雑誌をめくり、前回までの経…

登美彦氏、パニックとなる

「やつが出た!黒いやつが出た!」 登美彦氏は叫んだ。 森見登美彦氏はおのれの小説の中で、某キューブやら鴨川を南下する蛾の大群などを描いて、無類の昆虫王国好きと思われがちであるが、実際のところは昆虫を憎むこと甚だしい、「地球で一番エラいのは人…

登美彦氏、喜ぶ

森見登美彦氏は、森奈津子氏が「走れメロス」を誉めていたという噂を聞いた。三度の飯よりも誉められることが好きな登美彦氏は、少々元気を出した。 「どうせ一度は死ぬ身なら、誉められて誉められて誉め殺されたい」 登美彦氏はわけのわからないことを言っ…

登美彦氏、リーサルウエポンを出す

締切が、雑用が、地を埋め尽くす大波となって押し寄せてきたので、森見登美彦殿下は大事に温存していた最終兵器を出すことを余儀なくされた。 もちぐま参謀が尻をふりふり、怒り狂う登美彦殿下へ駆け寄った。 「殿下、まさかあれを?」 登美彦殿下がニヤリと…

登美彦氏、また地下に籠もる

森見登美彦氏はまた地下に籠もっている。 よくもまあ飽きもせずに、と言う人もある。 「私が世界で一番落ち着く場所は自分の部屋だ」と言う登美彦氏であっても、祇園祭を尻目に一日中、日光も浴びないという生活をすると、いいかげんに腹が立ってくる。どん…

登美彦氏、イタリア料理を食べる。

森見登美彦氏は四条烏丸の地下道を歩いていた。 階段を伝って地上へ出ると、四条通には夕闇が垂れこめて、その中でたくさんの提灯をつけた鉾が光っていた。笛と太鼓の音が響いていた。 「おお、祇園祭ぢゃ。綺麗ぢゃのう・・・」 登美彦氏はぼんやりと見上げ…

登美彦氏、ワールドカップが終わったと知る。

今朝、森見登美彦氏は同僚から聞いて、ワールドカップが終わったことを知った。熱狂する人々から石を投げられるほどサッカーに興味のない登美彦氏は、ワールドカップが終わったらしい夜、試合の行く末を見守るかわりに、ケーブルテレビでやっている「ドラゴ…

登美彦氏、がまがえるとなる

森見登美彦氏はたらりたらりとあぶら汗をかいている。 「サアお立ち会い、迫る三つの締切を睨んで登美彦氏がたらーりたらーりと流したあぶら汗を丁寧に集めたものがコレだ。この『登美彦汁』を全身にくまなく塗布すると・・・たいへん不潔である。フケツ!何…

登美彦氏、人間失効から立ち直る

先日、森見登美彦氏は「うっかり失効」していた人間としての尊厳を、遠い免許試験場まで出かけて回復することに成功した。 窓口にて「うっかり失効したのですが・・・」と己の状況を説明していると、まるで「ワタクシはうっかり屋さんであります、ああ、そう…

登美彦氏、飲む。

森見登美彦氏は歓送会に参加した。酒をあまり嗜まないと言いながら、このところ登美彦氏はしきりに飲んでいる。 「酒を飲むと、顔面が赤白まだらになるので嫌だ」 登美彦氏はそんなことを言いながら麦酒を飲むのだ。

登美彦氏、親孝行する。

森見登美彦氏は御両親の誕生祝いをしていなかった。これではいかんと登美彦氏は思い、令妹と手を結んで、今宵御両親にフランス料理を御馳走したということである。息子の鑑と言うべきこの美しき行いを日本全国ツヅウラウラに知らしめ、ただでさえ高すぎて持…

今日の登美彦氏

森見登美彦氏は以下のような土曜日を過ごしたらしい。 ■09:00 地下室にて覚醒する。 やらんといかんことの多さに呆然として何も手につかない。 煙草をむやみに吸う。 ■09:30 コーンフレーク食べる。 たぬきの話をむにむに書く。 鞍馬の天狗につい…

登美彦氏、肉を喰う

編集者の古囃子氏が入洛したので、森見登美彦氏は会いにいった。そうして古囃子氏に連れられて先斗町の由緒正しいことこの上なさそうなすきやき屋へ行った。 かつて夜の街を乙女が歩くような作品を書いたこともある登美彦氏だが、じつのところ氏は酒もあまり…

登美彦氏、読む

森見登美彦氏は黙々とマンガを読んでいる。