「御都合主義者かく語りき」
追う男。
「学園祭というただでさえ荒れ狂う大舞台において、我々はてんで勝手に大団円を求め、無闇やたらと迷走する。やがて我々をとらえるのは、「とにかく幕を引こう―ただしなるべく己に有利なかたちで」という手前勝手な執念である。その時、我々は御都合主義者となる」
歩く乙女。
「私は昔から運の良いお子様でした。私のごときやんちゃ娘が、頭蓋骨をかち割ることもなく無事に生き延びてこられたのは、きっと人一倍運が良かったからでしょう。幼い頃は自暴自棄になって三輪車にまたがり、幼児にあるまじき速度で坂道を下って母を卒倒させたこともある私です。こんな愚かな私を救ってくれる幸運の数々を、姉は「神様の御都合主義」と呼びました」
浴衣姿の樋口氏。
「彼は一年前にとある事情から一念発起してね、吉田神社に願をかけた。願いごとが叶うまでパンツを履き替えないと誓ったのだ。断じて行えば鬼神もこれを避け、苔の一念岩をも通す。彼はついに歴代の記録を塗り替えて、各クラブやサークルのパンツ番長たちに打ち勝ち、栄えあるパンツ総番長に選ばれたのだ」
呑んでいる羽貫さん。
「パンツ総番長なんて・・・それはむしろ不名誉ではない?」
パンツ総番長
「てきめんに病気になりました。しかし、どっこい生きている」
須田紀子さん
「でもね、どれだけチクチクしてても、象のお尻って、なんだか良くない?」
学園祭事務局長
「僕たちもね!ただ闇雲にアレをやっちゃいかん、コレをやっちゃいかんと言っているわけではないんだよ!僕たちがこんなに口喧しいのも、何かというと暴れたがる人たちの青春を、なんとか現実へ軟着陸させるためじゃないか。この学園祭を無事大団円へ持ち込むためにやっているんじゃないか。それなのに、なんだ!誰一人として、誰一人として、誉めてくれやしない!なんという損な役回りだ!どいつもこいつも好き放題!盗んだバイクで走り出したあの日のように、行きつく先も分からぬまま、走っていけると思っているのか!」
偏屈王。
「あんた、一期一会という言葉を知っているか。それが偶然のすれ違いになるか、それとも運命の出逢いになるか、すべては己にかかっている。俺と彼女の偶然のすれ違いは、運命の出逢いになる前に空しく費えた。『思えばあれがきっかけだった』と、いつの日か彼女と一緒に思い返す特権を、俺はむざむざ失ったのだ。それというのも、俺に機会を掴む才覚も度胸もなかったからだ!」