2006-01-01から1年間の記事一覧

登美彦氏、絶不調

近頃、森見登美彦氏は不機嫌である。 「表には偏屈を装い、内では明朗愉快」が信条の登美彦氏も、ここのところ付きまとう「ふわふわ太郎」(不運の神)や己の事務能力のなさにほとほと嫌気がさして、内面まで偏屈になってきた。 本日も登美彦氏は、新しく始…

登美彦氏、河豚を賛美する

森見登美彦氏は同期の人々と鍋をつついた。 同期の人々と飲み食いするのは良いことである。そして冬に鍋をつつくのも良いことである。鍋が河豚鍋であることも良いことである。良いことが三重に重なるのはさらに良いことである。そういう素晴らしい環境下にあ…

登美彦氏、呆れるほど勤勉に生きる

森見登美彦氏はインタビューの記事をチェックし、おびただしいメールに返事を書き、ピラフを食い、たぬきの話(五話目)を手直しし、『日本文壇史』を読み、寝坊し、『恋文の技術』二話目を完成させ、喫茶店の片隅にて新しい連作の構想を練るふりを巧みに演…

 「ダ・ヴィンチ」1月号(12月6日発売)

「ヒットの予感」 森見登美彦氏が、こちらでも近日出版される次作『夜は短し歩けよ乙女』について、飽きもせずに語っている模様。語られた内容について、信じるも信じないも読者の自由である。

「野性時代」12月号(11月11日発売)

「今月のおすすめ本」 森見登美彦氏が、近日出版される次作『夜は短し歩けよ乙女』について、少々語っている模様。

登美彦氏、サイン会を行う

森見登美彦氏は河原町ジュンク堂にて、サイン会を行った。 登美彦氏がサイン会を行うのは、二年前『四畳半神話大系』のサイン会をいまはなきブックファーストで行って以来のことである。生涯初のサイン会を行った書店が一年とたたぬうちに河原町から姿を消し…

登美彦氏、フクザツな気持ちになる

森見登美彦氏が京都で目覚めると、東京から矢文が飛来していた。そして登美彦氏は「きつねのはなし」が増刷になったことを知った。 だがしかし、登美彦氏は冬の琵琶湖のごとく静かである。 なぜならば、身体が痛むからであり、べつの締切が迫っているからで…

登美彦氏、凍える

森見登美彦氏は、ふいに襲いかかってきた寒気にびっくりして、「夏が終わったと思ったら、もう冬やんけ!」と叫んだ。「早すぎんか?」 そう言いながら、登美彦氏は痛む身体をおさえている。先日の竹林征伐のツケがまわってきたのだ。 「身体がギクシャクす…

登美彦氏、竹林征伐へ乗り出す

森見登美彦氏は満を持して、竹林伐採事業に乗り出した。 これからの世の中、いかに売れっ子作家といえども、多角的に経営していかなければ立ちゆかないからである。 登美彦氏は司法試験勉強に励む戦友をむりやり連れだし、京都の西、桂へ乗り込んだ。竹林の…

「asta*」12月号(11月6日発売)

「恋文の技術」 第一話「外堀を埋める友へ」 四月十日 拝啓。お手紙ありがとう。研究室の皆さん、お元気のようでなにより。 君は相も変わらず不毛な大学生活を満喫しているとの由、まことに嬉しく、上には上がいるものだと感服した。その調子で、何の実りも…

登美彦氏、書き終わる

森見登美彦氏はひねくれ者の狸たちが乱舞する小説をようやく書き終え、東京へ向かって送り出した。 古本市へ行く気まんまんだった登美彦氏は、すでに時間が五時をまわっていることに気づき、「終わってるがな!」と叫んで、しばらく立ち直ることができなかっ…

登美彦氏、人気者となる

森見登美彦氏はまた日帰りで東京へ出かけた。 登美彦氏は決して東京に宿泊しないことで有名である。なぜならばホームシックにかかるからであり、ホームシックがひどくなると身体が灰になるからである。それに加えて、滞っている仕事もあるからである。 登美…

「多忙」に関する弁明

森見登美彦氏は最近の自分の多忙ぶりについて、「それほど多忙ということは、登美彦氏は超売れっ子になったのではないか。いい気になっているのではないか」との非難をごく一部から受け、以下のように言った。 「ゆっくり書くのが好きなのである!」

登美彦氏、我が子を想う

森見登美彦氏がバスに揺られていると、知人が「本屋にならんでいましたよ」と教えてくれた。登美彦氏が二年ぶりに送り出した子どもたちは、もう書店の店先で戦っているという。 けれども登美彦氏は、健気に戦う我が子たちの姿を見守りに行ってやったりはしな…

登美彦氏の一日

・机に向かう。 ・煙草を吸う。 ・「Dr.コトー診療所」(DVD)を観て涙を流す。 ・何かを探して食べる。 以上を数セット繰り返すと一日が終わるという。 登美彦氏は述べる。 「最近、もう涙腺が制御できない。どうやら奴らはスタンドアローンで活動を始めたら…

登美彦氏、悩む

森見登美彦氏はいろいろと悩んでいる。 「悩み多きお年ごろである」という。 虫歯にも悩む。 癖毛にも悩む。 来週末にまたインタビューを受けに東京へ行かなくてはいけないことにも悩む。 サイン会をする約束をしてしまったことにも悩む。 京都のことを書い…

『きつねのはなし』(新潮社)(10月31日発売)

第四話 「水神」 祖父の「大宴会」が行われたのは、梅雨が明け切らない七月のはじめだった。 深夜、久谷さんが屋敷を通り掛かって、蕭条と降る雨の中に明るい光が漏れているのを見た。普段ならば明かりが落ちている時刻なので、久谷老人は不思議に思って立ち…

「きつねのはなし」(新潮社)(10月31日発売)

第三話 「魔」 板塀に挟まれた路地を抜けていくとき、奥に何かが私を待ち受けている気配をまざまざと感じた。私がその荒れ果てた庭へ足を踏み込んでみると、やはりその気配だけが残っていた。虫以外に動くものは何もないはずなのに、風景の奥にひそんだ何か…

森見登美彦氏、サイン会を行う

『きつねのはなし』刊行記念 新潮社 http://www.shinchosha.co.jp/event/ 日時 2006年11月12日(日)14:00〜 会場 ジュンク堂書店 京都BAL店 (京都市中京区河原町通三条下る二丁目山崎町 京都BALビル) 詳細 ※要整理券 お問合せ先 ジュンク堂書店 京…

「きつねのはなし」(新潮社)(10月31日発売)

第二話「果実の中の龍」 先輩の下宿に通い、その言葉に耳を傾けていた頃のことを思いだす。 電気ヒーターで指先を温めながら物語る先輩の横顔や、文机の上にある黒革の大判ノート、部屋に積み上げられた古本の匂い、電燈の傘にからみつくパイプ煙草の濃い煙―…

登美彦氏、読む

を読破することから逃げ続ける森見登美彦氏は、 を読んで手を汗で濡らした後、 を読んで頬を涙で濡らした。

「きつねのはなし」(新潮社)(10月31日発売)

第一話「きつねのはなし」 天城さんは鷺森神社の近くに住んでいた。 長い坂の上にある古い屋敷で、裏手にはみっしりと詰まった常暗い竹林があり、竹の葉が擦れる音が絶えず聞こえていた。芳蓮堂の使いで初めて天城さんの屋敷を訪ねたのは晩秋の風が強い日で…

登美彦氏、喋りに出かける

森見登美彦氏は電車にガタンゴトンと揺られて、出かけた。 車中にて島尾敏雄『死の棘』(新潮文庫)を読みふけった登美彦氏は、もうなんだか暗澹たる気分になり、息も絶え絶えであった。頭はガンガンして、身体はグッタリしていた。 「『逆境ナイン』とかを…

「小説NON」11月号(10月21日発売)

「桜の森の満開の下」 女は、ドアを開け放したままの部屋に座っていました。 部屋は眩しい光に満ちています。ブラインドがなくなって、晩夏の陽射しがギラギラと射し込んでいるからです。なくなったものはブラインドだけではありません。男が三年以上に亘っ…

登美彦氏、意外に仕事がある

森見登美彦氏は、じつはあんまり浮かれて遊んでばかりもいられないという事実に直面しそうになったが、気づかぬふりをして逃亡した。

登美彦氏、JAKUCHUを見る

森見登美彦氏は国立近代美術館におけるプライス・コレクションを眺めに出かけた模様。ただし氏が一番感銘を受けたのは噂に名高いJAKUCHUではなく、長沢芦雪という人の「白象黒牛図屏風」であったという。 登美彦氏は屏風の前に立ち尽くした。 「象がデカい。…

L MAGAZINE 11月号

「京都市、左京区。」 森見登美彦氏が左京区に関するアンケートに答え、京都市左京区を楽しむ上でほとんど役に立たない回答をして平気な顔をしている模様。

「我が手に自由を!」

森見登美彦氏は、ついに記念すべき日を迎えた。 登美彦氏は栄光に包まれていた。 堂々と胸を張って河原町通を歩いていく登美彦氏に、両側に立つビルからは紙でこしらえた色とりどりの花がわんさか降り注いだ。街角に立つ乙女たちは「あ、あの方よ!あの方が…

速報(無用な、かぎりなく無用な)

「森見登美彦氏、恋と仕事が未曾有にギリギリの模様」と事情通が語った。続報として―「訂正。ギリギリなのは仕事のみの模様」。さらに続報として―「登美彦氏は『大原三千院へ行って、わらべ地蔵の頭撫でたい』と寝言を言うようになった模様」。さらにさらに…