佐藤哲也『シンドローム』(キノブックス)

シンドローム(キノブックス文庫) (キノブックス文庫 さ 2-1)

シンドローム(キノブックス文庫) (キノブックス文庫 さ 2-1)

 

  佐藤哲也氏の『シンドローム』が発売される。

 この容赦ない傑作についてどのように語ればいいのか――登美彦氏はあれこれ悩み、うーんうーんと唸りながら解説を書いたのである。以下、解説の冒頭を抜粋。 

 青春とは『ひとり相撲』である。

 たとえばひとりの黒髪の乙女に恋をしたとしよう。

 その恋を成就させるためには乙女との距離を縮め、しかるべき地点で自分の思いを相手に伝えなければならない。恋愛成就の可能性を見きわめるべく、我々の精神は目まぐるしく活動する。乙女からのなんということもないメールを熟読玩味し、その一挙手一投足から膨大な仮説を組み立て、希望的観測と絶望的観測によって揉みくちゃにされる。しかし実地に検証する勇気のないかぎり、意中の乙女の胸の内は推測するしかなく、自分で作りだした幻影との駆け引きが続く。そこに「恋のライバル」が現れようものならもうメチャメチャである。我々は幻影をめぐって幻影と争う。

 これをひとり相撲と言わずしてなんと言おう。

  ヘンテコであり、ユーモラスであり、緻密であり、しかも情け容赦なく、そして美しい小説である。

 なお、登美彦氏が暗躍した竹林小説アンソロジー「美女と竹林」にも、佐藤哲也氏の「竹林の奥」という短篇が収録されている。こちらもまた「一体なにが起こっているんだ……」と読み進めていくうちに、脳味噌が竹林に取り囲まれていくような作品である。 ぜひどうぞ。

森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー

森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー

 

松井玲奈『カモフラージュ』(集英社)

カモフラージュ

カモフラージュ

 

 松井玲奈さんの『カモフラージュ』が発売される。

 「明太子スパゲティをこのうえなくおいしそうに書ける人。信頼せざるを得ないのである」

 この作品集をどう表現すべきか迷った挙げ句、登美彦氏は上記のような帯コメントを寄せた。たしかに作中に登場する明太子スパゲティは猛烈に美味しそうだった。ほかの食べ物も美味しそうだったのである。

 しかしそれだけではない。

 ふんわりした気分で読んでいるとギョッとさせられる。しかもそれが一度や二度ではないのである。 

円居挽『さよならよ、こんにちは』(星海社)

さよならよ、こんにちは (星海社FICTIONS)

さよならよ、こんにちは (星海社FICTIONS)

 

 我々にとって、かつて世界は奈良であった。

 円居挽氏による奈良的青春小説が発売される。森見登美彦氏も奈良出身の仲間として帯にコメントを寄せた。この本を読んでいると、四半世紀前に奈良で過ごした夏を思いだすのである。

 ちなみにイラストのくまおり純さんは、登美彦氏の『ペンギン・ハイウェイ』の装画を担当した人である。嬉しい再会だったが、短篇「京終にて(アット・ワールズエンド)」の扉頁にかわいいペンギンの姿を見つけて、登美彦氏はいっそう嬉しくなった。なにゆえペンギンが描かれているのか、その理由が知りたければ、円居氏による「あとがき」を読むべきであろう。登美彦氏は「なるほどナア」と思ったのである。

 なお、同じように奈良的青春を描いた短編集として、前野ひろみち氏の『ランボー怒りの改新』がある。こちらもおすすめである。

ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)

ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)

 

映画「ペンギン・ハイウェイ」blu-ray&DVD本日発売

  映画「ペンギン・ハイウェイ」のBlu-ray&DVDが発売される。

 先日、森見登美彦氏は原作者の特権として、いち早く「コレクターズエディション」というものを手に入れたが、オーディオ・コメンタリーやイベント映像はもちろんのこと、「アオヤマ君のノート」や、石田監督の手になる「イシダ君のノート」、さらには映画全編の絵コンテなど、とてつもなく盛りだくさんのオマケがついていた。おそるべきことである。もちろん「映画本編だけでいいよ」というストイックな人のためには、「スタンダードエディション」というものが用意されている。

 そして「原作を読んだことがない」という人は、この機会に是非とも原作小説をお買い上げいただければ幸いである。 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

『森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー』1月22日発売

森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー

森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー

 

 (まえがきより)

 「なぜ竹林なのか」と世の人は問うであろう。

 京都の某中華料理店において、担当編集者からこのアンソロジー企画を持ちかけられたとき、いささか私は怖じ気づいた。小説家の皆さんに書いてもらう?しかも好きなお題で?自分にそんな資格があるのか?あまりに畏れ多いことである!もちろん即座に断ろうとした。

 しかしその瞬間、風にざわめく竹林の姿が脳裏に浮かんできた。そしてふと気がつくと、この企画を引き受けていたのである。

 私は子どもの頃から竹林に心惹かれてきた。大学院で竹の研究をし、竹林を刈るだけという無謀なコンセプトで『美女と竹林』という本を書き、『竹取物語』の現代語訳にまで手をつけた。まるで宇宙植物のようなその佇まい、どんどん増える怪物的な繁殖力、彼岸と此岸の境界を思わせる内部空間……それらが私を魅了して止まないのである。というわけで、「竹林小説のアンソロジーを作る」というアイデアはあまりにも魅力的であり、とうてい抗うことはできなかった。この機会を逃せば、こんな得体の知れない本を世に送り出す機会なんて二度とこないだろうから……。

 かくして空前絶後の竹林小説アンソロジーが誕生した。

 それではみなさん、どうぞ竹林の奥深くへ。 

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 このアンソロジー企画は二冊同時刊行であり、もう一冊は宮内悠介氏のリクエストによる。

 こちらのテーマは「博奕」である!

宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

 

 以下は森見登美彦氏の竹林関連書籍である。

美女と竹林 (光文社文庫)

美女と竹林 (光文社文庫)