登美彦氏、秘密裡に活動する


 森見登美彦氏は、無用の苦難に敢えて耐え、ひとまわり大きな自分になるために「一人ハチクロ」へ挑んだ。だがしかし、そういったことを日誌にて報告すると、氏がそうやって机から離れることを憂う関係者から「サボっちゃいかんよ、コノヤロウ」という矢文が来る。
 ことほどさように、九月の登美彦氏は局所的に売れッ子である。
 そういうわけで登美彦氏は秘密裡に行動することにした。
 「報告しちゃいかん。ソーッと、ソーッと。抜き足さし足しのび足だ」
 かくして登美彦氏は京都の闇へ姿を消した。
 「やっみにかーくれて生きる、オレたちゃ妄想人間なのさ!とても人には見せられぬ・・・ケモノのようなこの身体・・・」
 (「妖怪人間ベム」のメロディーで歌うがよかろう)
 以下、登美彦氏に無断で列挙する。
 責任の一切は筆者にある。


 青春ピカソ (新潮文庫)
 

 森見登美彦氏は岡本太郎の『青春ピカソ』を読み、「岡本太郎はエライ人だなあ!もちろんピカソもエライが」と感心した。
 いつ読んだかは公表しない。
 

 森見登美彦氏は戦友と連れだって『スーパーマンリターンズ』を観た。登美彦氏は大いに感動し、「おお!オモチャのように美しいアメリカよ!素晴らしく金のかかった素晴らしく阿呆な映画よ!万歳万歳、アメリカ万歳!」と叫んだ。
 いつ観たかは公表しない。
 ちなみに登美彦氏は『パイレーツオブカリビアンデッドマンズチェスト』もきっちりおさえたという噂である。
 だがしかし、いつ観たかは公表しない。


 月刊 IKKI (イッキ) 2006年 10月号 [雑誌] 


 森見登美彦氏がある日、郵便ポストをのぞくと、IKKIの10月号が届いていた。封筒から雑誌を取り出した登美彦氏は、巷で話題騒然となって女子高生にキャアキャア言われているという竹熊健太郎氏の艶めかしいスク水姿を拝み、大切に本棚へしまった。
 http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_27cf.html
 そのスク水姿と、ふくよかなお腹の上にある「2−Cたけくま」という文字が忘れられず、夢にまで出てきたので、登美彦氏は『サルまん』を買って読み耽った。
 いつ読んだかは公表しない。


 サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 上巻 (BIG SPIRITS COMICS) サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 下巻 (BIG SPIRITS COMICS)


 森見登美彦氏は『青春ピカソ』の如きアヴァンギャルド精神を発揮しつつ、『ハチクロ』から得た美しい青春のイメージと、『スーパーマン』から得た奇想天外なファンタジーの力と、『サルまん』から得たなんだかよく分からないものの三つを頭の中で混ぜ合わせ、机上で事件を起こしつつある。すべては渾然一体となり、とにかくもう、わけがわからないものであることは言うまでもない。「まことに申し訳ないことだ」と登美彦氏はこっそり呟いている。「だがしかし、誰に対して?」


 ちなみに、いつ何を書いているかは公表しない。