文章

「asta*」 10月号

恋文の技術 第六話「続・私史上最高厄介なお姉様へ」 これは守田一郎による犯行声明であります。 パソコンの在処を教えて欲しければ、以下の要求にこたえよ。 一、守田一郎を顎で使わない 二、朝と晩には必ず守田一郎のおわします方角に向かって礼拝する 三…

「小説すばる」 8月号

ヨイヤマ万華鏡 「狂言金魚」 掛川は「超金魚」を育てた男として名高い。 超金魚とは、なにか。 俺たちは奈良の出身だが、出身高校がある町は古くから金魚の養殖業が盛んで、父が住職をやっている寺のそばにも藻の浮いた養殖池が広がっていた。本堂の裏手に…

「小説新潮」 7月号

「蝸牛の角」 「街路樹の葉から滴り落ちた水一滴にも、全宇宙が含まれている」というお話であった。 京都にて無駄な日々を送る学生ならば誰もが奉じる「阿呆神」という神は何処におわすかという話が転がって、シュレディンガー方程式やら宇宙誕生やらインフ…

「asta*」 8月号

恋文の技術 第五話「孤高のマンドリニストへ」 今も銀行員のかたわら、マンドリン道を究めておられますか? 正直なところ、先輩のマンドリンの腕前はいまだに謎です。マンドリンを弾くより語っている方が長かったからです。マンドリンオーケストラを飛び出す…

「小説宝石」 8月号

美女と竹林 第八回「登美彦氏、外堀を埋めて美女と出逢う」 自分の作品が世の人に読んでもらえるようになるまでには、苦しい修行の日々を何年も過ごさなくてはならない。注目されることがなくても、うまく書けなくても、本にしてもらえなくても、へこたれず…

「asta*」6月号(5月6日発売)

森見登美彦氏、迷走を開始する。 「男にはやらねばならぬ時がある」と氏は関係者に語っている。 しかし新作を読んだ関係者からは「そんなにもやらねばならなかったのか?」と疑問の声が上がっている。 「恋文の技術」 第四話「女性のおっぱいに目のない友へ…

「小説宝石」5月号(発売中)

美女と竹林 第五回「竹林の夜明けは遠かった」 登美彦氏が暮らしていた四畳半王国(=学生時代)においては、時間と才能の空費は輝かしき勲章であった。人間としての大きさが「無駄なこと」に注いだ時間と才能の多寡ではかられる世界、いかに手のこんだ方法…

「小説現代」(発売中)

「思い出の映画」 オーストラリア映画(1988年) アレックス・プロヤス監督 「スピリッツ・オブ・ジ・エア」 について、登美彦氏が文章を書いている。

「小説宝石」4月号(発売中)

美女と竹林 第四回「机上の竹林」 阪急電車で四条へ戻ると、紅葉目当ての観光客が雨で行き場を失って街へ流れこんだらしく、たいへんな混雑である。 錦市場の人気ぶりときたらもうお話にならない。 彼らは喫茶店を探してうろつきながら寿司詰め状態の錦を抜…

「野性時代」4月号(3月12日発売)

森見登美彦氏は関係者にもらした。 「どうもな。一部にそう言う人がいるのだけれども、モリミーというのはどうかと思うのだ。いや、ほんまに。格好をつけているわけではなく」 特集 「森見登美彦の歩き方」 内容はこんな風になっているという(筆者もまだ見…

「asta*」4月号(3月6日発売)

「恋文の技術」 第三話「偏屈作家・森見登美彦先生へ」 六月朔日 拝啓。森見登美彦様。ご無沙汰しております。 後輩の守田一郎です。 覚えておいででしょうか。部活時代、春合宿先の野外活動センターにて、森見さんが魂の保湿のために隠し持っていたグラビア…

「小説NON」3月号(2月21日発売)

「百物語」 これは私が百物語の催しに出かけた話である。 百物語というのは、大勢の人が座敷に集まって百本の蝋燭を立て、怪談を一つ語り終わるごとに蝋燭を吹き消していくという遊びだと聞いたことがあった。私は、仏壇に立てるような白くて小さな蝋燭を思…

「hon・nin」(3月8日発売)

「お詫びしたい」 机上を離れた日常は、ことごとく他流試合のようなものだ。掃除も炊事洗濯も通勤も恋も仕事も酒席の礼儀作法も編集者との打ち合わせも、一切がことごとく意のままにならない。他流試合を勝ち抜くことに意義を見いだす人もいるけれども、私は…

「小説宝石」3月号(2月22日発売)

美女と竹林 第三回「竹林整備初戦」 洛西の竹林へ通っては、奴隷のごとく黙々とノコギリを振るい、切り倒しては積み、切り倒しては積むだけの日々。誰からも賞賛されない、孤独な営みが続くであろう。彼の前に道はなく、彼の後ろに道ができる。 だがいずれ、…

「小説すばる」(2月17日発売)

ヨイヤマ万華鏡第一話「宵山姉妹」 彼女と姉の通う洲崎バレエ教室は三条通室町西入る衣棚町にあって、三条通に面した四階建ての古風なビルであった。彼女たちは土曜日になると、ノートルダム女子大学の裏手にある白壁に蔦のからまった自宅から母親に送り出さ…

「小説宝石」2月号(1月21日発売)

美女と竹林 「ケーキと竹林」 妄想作家森見登美彦氏は、作家として行き詰まった場合の布石として「多角的経営」を志し、竹林経営へ進出してみることにした。十月のある晴れた竹林日和、登美彦氏は洛西の竹林へ分け入ってみたが、荒れて薄暗い竹藪をうろつく…

 「文藝」 春号 「恩田陸へのQ&A」

森見登美彦氏が恩田陸氏へ、なんだか妙なテンションで質問を発している模様。

 朝日新聞全国版 1月4日(大阪本社版をのぞく)

森見登美彦氏が四畳半生活に関する短いエッセイを寄せている模様。

「asta*」2月号(1月6日発売)

「恋文の技術」 第二話「私史上最高厄介なお姉様へ」 四月十一日 拝啓。御無沙汰しております。守田です。 私を覚えておいででしょうか。教授の天才的直感によって白羽の矢を立てられ、山奥の研究所へ島流しの憂き目にある後輩なんぞ、もはやお忘れでありま…

「パピルス」10号(12月28日発売)

「父の発つ日」(たぬき第五話) 生きてゆくかぎり、サヨナラという出来事と袂を分かつことはできない。 それは人間であろうと天狗であろうと、狸であろうと同じことだ。 サヨナラには色々なものがある。哀しいサヨナラもあろうし、時にはありがたくてせいせ…

「小説宝石」1月号(12月21日発売)

美女と竹林 「余は如何にして竹林の賢人となりしか」 残暑の厳しい夕暮れの京都の街を歩きだしながら、登美彦氏は大いなる野望に胸膨らます。 「いずれはカリスマ竹林経営者として、TIMEの表紙を飾る。これはもう、作家業に行き詰まった場合の布石なんて…

「asta*」12月号(11月6日発売)

「恋文の技術」 第一話「外堀を埋める友へ」 四月十日 拝啓。お手紙ありがとう。研究室の皆さん、お元気のようでなにより。 君は相も変わらず不毛な大学生活を満喫しているとの由、まことに嬉しく、上には上がいるものだと感服した。その調子で、何の実りも…

「小説NON」11月号(10月21日発売)

「桜の森の満開の下」 女は、ドアを開け放したままの部屋に座っていました。 部屋は眩しい光に満ちています。ブラインドがなくなって、晩夏の陽射しがギラギラと射し込んでいるからです。なくなったものはブラインドだけではありません。男が三年以上に亘っ…

L MAGAZINE 11月号

「京都市、左京区。」 森見登美彦氏が左京区に関するアンケートに答え、京都市左京区を楽しむ上でほとんど役に立たない回答をして平気な顔をしている模様。

「野性時代」11月号(10月12日発売)

「魔風邪恋風邪」 偏屈ラブコメ完結編 風邪をひいた男 「しかし、そこまで徹底して考えろと言うのならば、男女はいったい、如何にして付き合い始めるのであろうか。諸君の求めるが如き、恋愛の純粋な開幕は所詮不可能事ではないのか。あらゆる要素を検討して…

「野性時代」10月号(9月12日発売)

「御都合主義者かく語りき」 追う男。 「学園祭というただでさえ荒れ狂う大舞台において、我々はてんで勝手に大団円を求め、無闇やたらと迷走する。やがて我々をとらえるのは、「とにかく幕を引こう―ただしなるべく己に有利なかたちで」という手前勝手な執念…

幻冬舎「パピルス」8号(8月28日発売予定)

「金曜倶楽部」 京都には、大正時代から続くという秘密結社がある。 その設立目的は謎に包まれているが、案外ただの仲良しグループだと言う人もいる。その席数はつねに七つと定められ、各座を占める人間たちは、それぞれ七福神の名をもって呼ばれた。ひと月…

「小説NON」7月号(6月22日発売)

「走れメロス」 しかし見よ、目前の加茂川を。 先日の雨で水嵩が増え、濁流滔々とデルタに注ぎ、どうどうと響きを上げる激流が、あたりを浸している。芽野は天を仰ぎ、めったに気にかけたことのない神に哀願した。「ああ神様!太陽が沈んでしまわぬうちに、…

幻冬舎「パピルス」6号(4月28日発売予定)

「大文字納涼船合戦」 狸はまねることを信条とする。 花鳥風月をまねるのも風流だが、やはりいちばん味があるのは人間をまねることであろう。そうやって人間の生活や行事にどこまでも相乗りして遊ぶのが、なんだか妙に面白い。このやむにやまれぬ性癖は、遠…

「小説NON」3月号(2月22日発売)

「藪の中」 たしかに、あの映画「屋上」には失われたラストシーンがある。 ― 撮影中に、さぞや見るに堪えない修羅場があったんだろう。 しかし自分でまいた種だ。 そもそもあんな企画を立てるのが、人倫に反しているんだ。男二人に女一人、密室に近い環境に…