「小説宝石」1月号(12月21日発売)


美女と竹林 「余は如何にして竹林の賢人となりしか」

 

 残暑の厳しい夕暮れの京都の街を歩きだしながら、登美彦氏は大いなる野望に胸膨らます。
 「いずれはカリスマ竹林経営者として、TIMEの表紙を飾る。これはもう、作家業に行き詰まった場合の布石なんていう生半可なものではない。華麗なる転身だ。世界の森見、森見・Bamboo・登美彦!たまには小説も書く社長。そしてうなるほどの大金を稼ぐ。その大金でまた竹林を買う。竹林で盛大なパーティを開いて、初恋の人が来てくれるのを待ってみたりする。親友の明石には早く弁護士の資格を取ってもらって、森見Bamboo社の重役兼顧問弁護士をやってもらおう。たまには長期休暇を取って、どこかへ旅行に出かけるのもいいな。そうだ、経費で自家用セグウェイを買って、明石や社員たちと視察をかねて琵琶湖を一周しよう・・・うぃーん」
 登美彦氏はそんなことを考えた。
 そして暮れゆく空へ指を立て、「諸君。どうやら未来は薔薇色らしいぞ!」と呟いた。