「野性時代」4月号(3月12日発売)


 森見登美彦氏は関係者にもらした。
 「どうもな。一部にそう言う人がいるのだけれども、モリミーというのはどうかと思うのだ。いや、ほんまに。格好をつけているわけではなく」


 特集 「森見登美彦の歩き方」

 


  内容はこんな風になっているという(筆者もまだ見ていない)


   『夜は短し歩けよ乙女』外伝書き下ろしワンダリングストーリー


   著者インタヴュー&全著作解説

 
   モリミー通に訊く! 見どころガイド


   対談 森見登美彦with本上まなみ


   森見登美彦用語集


   森見登美彦の里程標


   取材こぼれ話


   最新小説「ペンギン・ハイウェイ


  ペンギン・ハイウェイ


 僕はたいへん頭が良く、しかも努力を怠らずに勉強するのである。だから将来はきっと偉い人間になるだろう。僕はまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けぬほどいろいろなことを知っている。毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。僕の知りたいことは数かぎりなくある。宇宙のことにも興味があるし、生き物や、海や、ロボットのことにも興味がある。歴史も好きだし、偉人伝とかを読むのも好きだ。ロボットをガレージで作ったことがあるし、「海辺のカフェ」のおじさんに天体望遠鏡をのぞかせてもらったこともある。海はまだ見たことがないけれども、近いうちに探検に行こうと計画を練っている。どんなものでも、実物を見ておくことは大切だ。百聞は一見に如かずである。
 他人に負けるのは恥ずかしいことではないが、昨日の自分に負けるのは恥ずかしいことだ。一日一日、僕は世界について学んで、昨日の自分を上まわる。たとえば僕が大人になるまでは、まだ長い時間がかかる。今日計算してみたら、僕が成人するまで三千と百九十一日かかることが判明した。そうすると僕は三千と百九十一日分偉くなるわけだ。その日が来たとき、自分がどれだけ偉くなっているか見当もつかない。偉くなりすぎてタイヘンである。みんなびっくりすると思う。結婚してほしいと言ってくる女の人もたくさんいるかもしれない。けれども僕はもう相手を決めてしまったので、結婚してあげるわけにはいかないのである。もうしわけないと思うけれども、こればかりはしょうがない。