森見登美彦氏はインタビューの記事をチェックし、おびただしいメールに返事を書き、ピラフを食い、たぬきの話(五話目)を手直しし、『日本文壇史』を読み、寝坊し、『恋文の技術』二話目を完成させ、喫茶店の片隅にて新しい連作の構想を練るふりを巧みに演じ、洗濯をし、呆れたことに髪を切りさえした。
「こんなに勤勉に生きていては、じきにダメになる!」
登美彦氏は怒りに燃えている。
こんなに勤勉なのにもかかわらず、事態はいっこうに良くならない。
登美彦氏は本当に旅に出たい。
「尾道か温泉に行きたい」
そればかり言っているという。なぜ「尾道」は具体的で、「温泉」は漠然としているのか、その理由は分からない。
あんまり勤勉すぎて苛々するとき、登美彦氏はこのDVDを観る。登美彦氏は次のシーズンがDVD化されるのを心待ちにしているという。