「わたしは『夜行』をこう読んだ!」結果発表開始


 夜行


 アニメ「有頂天家族2」も残すところあと三話となった。
 今さら森見登美彦氏にできることは何もない。アニメの内容も狸的修羅場を迎えつつあるが、おそらく富山の方面も狸の手を借りたいほどの修羅場を迎えているにちがいないのである。なんの足しにもならないが登美彦氏は「なむなむ」と念を送る。


 ところで、先日募集した「わたしは『夜行』をこう読んだ!」の結果が決まり、これから毎夜、一篇ずつ公開されていく予定である。


 こちらにて
 http://www.shogakukan.co.jp/pr/morimi/readersvoice.html


 ご応募いただいた皆様、まことにありがとうございました。
 そしてまだお読みでない方はこの機会にぜひ。

「有頂天家族2」記念切符


 先日、森見登美彦氏は叡山電車出町柳駅を訪ねた。
 今年の三月に登美彦氏の十周年記念イベントが叡山電車にておこなわれたのだが、その際に用いた特別製「ヘッドマーク」を寄贈しに出かけたのである。ヘッドマークとは列車の前や後ろに掲げる、列車名を記した図案のことである。登美彦氏の描いた落書き「無人島のおじさん」をベースにデザインされている。前と後ろの二つを作成したので、残りの一つは登美彦氏の秘密基地に飾ってある。


 出町柳駅を訪ねた際、登美彦氏は叡山電車の方から「有頂天家族2」の記念切符をもらった。「おもしろき古都は、良きことなりきっぷ」という。
 下鴨家の兄弟やその母、南禅寺玉瀾の姿が印刷された特別入場券はたいへんかわいらしい。次兄の化けた叡電が印刷された「叡山電車一日乗車券」もある。鞍馬駅貴船口駅八瀬比叡山口駅一乗寺駅出町柳駅の各駅でそれぞれ一枚ずつ入手することができる。
 これを機に叡山電車の路線を制覇するのも楽しいにちがいない。
 京都にお越しの際はぜひどうぞ。
 詳細は下記のリンク先をご参照いただきたい。
 https://eizandensha.co.jp/event/detail131/


 それにしても叡山電車の皆様にはお世話になりっぱなしである。
 森見登美彦氏は深く感謝している。

森見登美彦氏、広島へ出かける。

 
 

夜行

夜行

 
 

徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男

徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男


 昨日、森見登美彦氏は広島へ出かけた。
 2011年から続く「広島本大賞」は今年で七回目である。小説部門に登美彦氏の『夜行』、ノンフィクション部門に木村元彦氏の『徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男』が選ばれた。贈賞式にて登美彦氏は木村元彦氏と今西和男氏にご挨拶した。登美彦氏はスポーツ全般についての知識がほとんどなく、『徳は孤ならず』を読んで初めて、広島が日本のサッカーにおける大事な地であったことを知ったのである。
 『夜行』は広島だけを舞台にした小説ではない。そういうわけで登美彦氏は「なんだか申し訳ない」気持ちでもあったのだが、『夜行』第一章の舞台となった「尾道」には格別の思い入れがあることもたしかである。
 『夜行』という小説は「尾道」に始まり「京都」に終わる。
 登美彦氏の描く「京都」が「偽京都」であるように、登美彦氏の描く「尾道」もまた「偽尾道」であるにはちがいないが、登美彦氏はひとつひとつの土地をそのようにして自分の妄想を通してしか描くことができない。
 この「偽尾道」が広島の皆さんにも面白いものであれば……
 そう登美彦氏は祈っている。

「シャーロック・ホームズの凱旋」(小説BOC)


 

小説 - BOC5

小説 - BOC5


 中央公論新社の小説BOC第五号に、森見登美彦氏の連載「シャーロック・ホームズの凱旋」の第三話「マスグレーヴ家の儀式(前篇)」が掲載されている。あいかわらずシャーロック・ホームズ氏は有益な推理をいっさい披露しない。
 

 「ワトソン君。君はどう思う?」
 ふいにホームズに声をかけられ、私は我に返った。
 いつの間にかホームズはベッドで仰向けになり、下宿の天井を見上げていた。その胸には『イケてる世の捨て方』を抱いている。
 「……なにが?」
 「隠居するのにふさわしい場所を考えていたのさ。たとえば大原はどうだろうか。ヴィクトリア朝京都の忌々しい喧噪もスモッグもあそこなら届かない。心穏やかに生きていける。苔むしたわらべ地蔵たちとぷつぷつ語り合い、そして蜜蜂を飼うんだ」
 「どうして蜜蜂なんだよ」
 「ハチミツは身体にいいんだぜ。ローヤルゼリーも」
 「そりゃそうだが」
 「あるいは吉田兼好みたいに竹林に庵を結ぶ手もある。いかにも世を捨てた感じがするだろう。洛西には立派な竹林がいくらでもあるさ。小さな庵に立て籠もって毎朝タケノコを掘る。そして若竹煮を主食にして生きていく。いや待てよ、若竹煮だけでは栄養が不足するな。やっぱり蜜蜂も飼ったほうがいいかな。若竹煮とローヤルゼリーだけで人間は生きていけると思うかい?僕は栄養学には不案内だからね、医師としての君の意見が聞きたい」
 「栄養はともかくとして、そんな退屈な生活に君が耐えられるとは思わないね。君に隠居は向いてない」
 「失敬だな、ワトソン君。隠居する才能ぐらいあるさ」
 「何を言ってるんだ、ホームズ。まだ君の人生は始まったばかりなんだ。これからバリバリ活躍するんだ」
 「……なるほどね。で、それはいつからなんだ?」
 ホームズは吐き捨てるように言うと、本を放り投げ、布団にもぐりこんで背を向けてしまった。
 「僕の活躍はいつから始まるんだ?教えてくれ!」
 その悲痛な叫びには私も返す言葉がなかった。

 

テレビアニメ「有頂天家族2」関連書籍


 アニメ「有頂天家族2」の開始にともなって、『有頂天家族 二代目の帰朝』が文庫化される。
 もろもろ、よろしくお願いいたします。
 
 


 

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)


 

 
 


 

有頂天家族公式読本

有頂天家族公式読本


 

有頂天家族フィルムコミック(上)

有頂天家族フィルムコミック(上)

 
 

映画「夜は短し歩けよ乙女」関連書籍


 森見登美彦氏は奈良にて春の空をボーッと眺めている。
 映画「夜は短し歩けよ乙女」とTVアニメ「有頂天家族2」が始まろうとしているとは思えないほど、奈良はのどかである。登美彦氏は淡々とした日々を送っている。次作『熱帯』を執筆するか、のりあげた暗礁に寝転がってボーッとしているかである。
 関係者の皆様の一助となるべく宣伝をしておく。


 以下、映画「夜は短し歩けよ乙女」の関連書籍である。
 ちなみに『夜は短し歩けよ乙女』が角川つばさ文庫にもぐりこんだのは驚くべきことである。
 「大丈夫なんだろうか」とチラリと思わぬでもないが、しかし丁寧な注釈や総ルビ、挿絵、ほかにも丁寧な仕掛けがあり、たいへん読みやすくステキな本になっている。単行本版・文庫版を読まれた方も、ぜひ一度手に取っていただけると幸いである。


 


 


 


 


 

夜は短し歩けよ乙女 (角川つばさ文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川つばさ文庫)


 ついでに『四畳半神話大系』関連である。
 こちらも合わせて宜しくお願いいたします。


 

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)


 


 

四畳半神話大系オフィシャルガイド

四畳半神話大系オフィシャルガイド


 

四畳半神話大系公式読本

四畳半神話大系公式読本

10周年の終わり、広島本大賞、「夜は短し歩けよ乙女 銀幕篇」


 2017年の四分の一が終わろうとしている。
 この三ヶ月、森見登美彦氏は近年まれに見る多忙ぶりであった。年明け早々の下鴨神社におけるイベントを皮切りに、直木賞関連のもろもろ、10周年記念イベント、劇場アニメ「夜は短し歩けよ乙女」のもろもろ、テレビアニメ「有頂天家族2」のもろもろ……。
 色々なことがありすぎて、当日誌を更新することもできなかった。


 三月上旬に叡山電車さまの全面協力のもと開催された10周年記念イベント「ぐるぐるミステリーツアー」によって、登美彦氏の四年近くにわたった「10周年」は終了した。時空の歪みは修正され、登美彦氏は14周年目へ跳躍して一気に老けこんだのである。10周年記念作品『聖なる怠け者の冒険』『有頂天家族 二代目の帰朝』『夜行』でお世話になった朝日新聞出版、幻冬舎小学館の皆様に御礼を申し上げる。そしてご応募いただいた皆様に御礼を申し上げる。
 四年も立て籠もれば「10周年」にも愛着が湧く。
 登美彦氏は一抹の淋しさをおぼえている。


 聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫) 有頂天家族 二代目の帰朝 夜行


 さらに、登美彦氏の小説『夜行』が広島本大賞をいただくことになった。
 「尾道をちょこっと描いただけなのに……」
 と、登美彦氏はたいへん恐縮している。
 五月、登美彦氏は授賞式のために広島へ出かける予定である。


 劇場アニメ「夜は短し歩けよ乙女」は四月七日全国公開予定である。 
 来場者特典として「夜は短し歩けよ乙女 銀幕篇」という掌編小説が期間限定で配布される。
 詳しくは公式サイトを参照していただきたい。 
 http://kurokaminootome.com/#news
 この掌編は「先輩から乙女への手紙」「乙女から先輩への手紙」という一対で構成されている。いわゆる書簡体小説である。
 しかし製作委員会という黒幕の悪辣な陰謀によって、公開第一週は「先輩から乙女への手紙」、第二週は「乙女から先輩への手紙」というように期間を区切って配布されることになった。これこそ資本主義の横暴、血も涙もない大人の都合というべきである。原作者としてまことに遺憾でありそのような非浪漫的策略は御免こうむる!と言うべきところを登美彦氏はスンナリ承知して黒幕と手を結んだ。このようにして人間は堕落していく。
 読者諸賢のご寛恕を乞う。
 「銀幕篇」と大層な題名がついているものの、姫りんごのごとき、小さな小さな小説である。
 本篇のほんのオマケとして楽しんでいただければ幸いである。

登美彦氏、フロンティア文学賞候補作を読み耽る


 一月の終わりである。
 我らが2017年もすでに「十二分の一」を終えた。
 森見登美彦氏は時間に追われるのを嫌悪する者だが、しかし年頭に2017年氏から言われた言葉が頭からはなれない。
 彼はこう言ったのである。
 「すでに新年は始まっている。この確固たる事実を受け容れることです。そして、これまでないがしろにしていた『一月から三月』にこそ、いっそ燃え尽きる覚悟で努力しなさい。なにごともスタートダッシュが肝心。やらねばならぬこと一切を春までに終わらせればビッグな男になれます」
 登美彦氏はカレンダーを見上げて呟く。
 「もう二月か……」


 そんなわけで焦ったり開きなおったりしながら、登美彦氏はフロンティア文学賞の候補作を読み耽っている。
 先日、いくつもの大作が東京からドサッと送られてきたのである。
 残念なことに昨年は「大賞なし」という結果に終わったので、登美彦氏は「今年こそは!」と願いながら読んでいる。選考委員の冲方丁さんと辻村深月さんと会うのは楽しみなことである。
 それから、前々回のフロンティア文学賞を受賞した阿川せんりさんの新作も出た。受賞作『厭世マニュアル』と同じく、第二作『アリハラせんぱいと救えないやっかいさん』にも、「阿川節」というべきものが漲っている。
 どうぞ宜しくお願いします。

 
 

厭世マニュアル

厭世マニュアル

 
 

アリハラせんぱいと救えないやっかいさん

アリハラせんぱいと救えないやっかいさん

 
 

イベント、出版、連載のお知らせ

 
 


 森見登美彦氏が直木賞との対決にそなえて英気を養っている間、さまざまな出来事があった。
 まずは下鴨神社にて、アニメ「有頂天家族2」の成功を祈願するイベントがあった。かわいい狸ポンチョをかぶった毛玉たちが大勢集まってお祈りをするとともに、アニメ「有頂天家族」の「京都特別親善大使」への任命式が厳かにとりおこなわれたのである。
 冬の糺の森はたいへん冷えこみ、和服姿だった登美彦氏はただでさえ震えていたが、任命式に姿を見せた門川大作京都市長から、
 「第三部はまだですか?」
 と催促されて肝を冷やした。
 まだなのである。どうしようもないのである。
 原作の動向はひとまず脇において、春から始まるアニメ「有頂天家族2」を宜しくお願いいたします。


 


 河出書房新社からこのような本が出る。
 池澤夏樹さん、伊藤比呂美さん、町田康さん、小池昌代さんという錚々たる人たちの中に、登美彦氏がこっそり混じっている。これは以前、ジュンク堂書店池袋本店で開催された連続講義を書籍化したものであり、登美彦氏は『竹取物語』について個人的に思うことを語っている。べつにムツカシイことを喋っているわけではないので、竹取物語に興味がある人もそうでない人も、お読みいただければ幸いである。

 
 

小説 - BOC - 4

小説 - BOC - 4


 また、中央公論新社から小説BOCの第四号が発売される。
 特集において森見登美彦氏が「ヴィクトリア朝京都」なるものをさまよう、という強引きわまる企画が展開されている。「こんなもの、すべて妄想じゃないか」と言われても返す言葉はまったくない。妄想するのがお仕事である。
 第四号には新連載「シャーロック・ホームズの凱旋」の第二回、「赤毛連盟(後篇)」も掲載されている。かの名探偵ホームズを文字通り丸裸にする小説を書いてしまったので、今になって登美彦氏はなんだか申し訳なく思っている。しかし今さら手遅れである。
 現在、森見登美彦氏は第三回を準備中である(心のどこかで)。


 最後にイベントのお知らせである。
 大阪南船場のバー「リズール」にて、登美彦氏はトークイベントを行う。以前にも一度、玄月さんに誘われて出かけたイベントである。おそらく何かぷつぷつと喋ることであろう。
 予約制なので、詳細はwebページで確認してください。
  http://www7b.biglobe.ne.jp/~liseur/
  第61回 Creator’s NEST
  日時:2月19日(日) 16時〜(15時半開場)
  料金:ワンドリンク付き2000円

森見登美彦氏、直木賞に敗北する。

 夜行


 昨日、森見登美彦氏は京都駅の新幹線ホームに立っていた。
 ボーッとしていると、声をかけてくる人があった。
 誰かと思えば本上まなみさんだった。
 登美彦氏は驚いて「うわ!」と言った。
 本上さんは笑っていた。
 「これから東京ですか?」
 「今日は直木賞の選考会でして……」
 登美彦氏が言うと、本上さんは「ああ!」と察してくれた。
 それにしても新幹線で本上さんと偶然会うなんて初めてのことである。
 「これが直木賞のチカラか!」
 登美彦氏はそう思ったのである。


 待ち会は文京区某所の某中華料理店の二階で開かれた。
 まるで親戚の家みたいな心地よいところである。
 やがて五時を過ぎると国会図書館の元同僚や各社の担当編集者の方々が集まってきて、みんなで美味しい中華料理を食べた。聞くところによると冲方丁さんもどこかで待ち会をしているらしい。どんなところでやっているのだろうか、冲方さんも同じ緊張感を味わっているのかな、などと考えながら登美彦氏はウーロン茶ばかり飲んでいた。
 登美彦氏が直木賞の候補になるのは二度目で、一度目は『夜は短し歩けよ乙女』で候補になった2007年のことだった。あの頃、登美彦氏はまだ国会図書館の関西館に勤めており、直木賞の候補になったといわれても実感がなかった。だから「待ち会」のようなオオゲサなこともしなかった。しかしあれから十年が経ち、せっかく二度目に候補になったのだから、噂に聞く「待ち会」というものを経験してみようと思ったのである。
 それにしても電話を待つのはイヤなものである。
 落ちるのなら落ちるので全然かまわないのだが、落ちましたとハッキリ言われるまでは落ちていない。なんだか自分がシュレディンガーの猫的な宙ぶらりんな存在になったかのようである。そうそう、こんな感じだった――と登美彦氏は十年前のことを思い返した。
 そして七時過ぎに電話が鳴った。
 まわりの人たちがシンと静まり返る中、登美彦氏は電話を取った。

 
 待ち会は速やかに残念会に変身し、午後九時に散会となった。
 そこから先は、登美彦氏と『夜行』担当編集者ふたりの残念会となる。登美彦氏たちは待ち会の参加者たちに見送られて東京駅へ向かい、午後十時発の寝台列車サンライズ瀬戸」に乗車したのである。
 サンライズが走りだすと東京の街の灯が遠ざかった。
 担当編集者がシャンパンを開けた。
 ふたりはこれまでに出かけた旅の思い出などを語りつつ、シャンパンを飲みながら夜の底を西へ走っていった。彼らは幾度も寝台列車に乗って旅をしてきたが、今回の旅の味わいはまた格別なものだった。
 熱海を通りすぎ、浜松も通りすぎた。
 異世界のような夜がどこまでも続いていた。
 担当編集者が車窓を眺めながら、
 「本当に『夜行』の世界ですね」
 と感に堪えぬように言った。
 車窓を流れていく街の灯を眺めながら、シャンパンを飲むのは素晴らしい。『夜行』を読まれた方は、ぜひ一度サンライズにご乗車されることをおすすめする。
 「今日は充実した一日だった」
 と登美彦氏は思った。


 翌朝、登美彦氏と編集者は岡山駅で降りた。
 サンライズ瀬戸は京都に停車しないのだからしょうがない。
 まだ夜明け前の薄暗い街をさまよい、ようやく見つけた喫茶店「ポエム」でモーニングセットを食べた。編集者が棚から取ってきた朝刊には、すでに恩田陸さん直木賞受賞のお知らせが掲載されている。どうして自分はいま岡山の喫茶店の片隅にいるのだろうと不思議な感じがする。登美彦氏はシャンパンの飲み過ぎと睡眠不足であくびばかりしていた。珈琲を飲んで暖まっているうちに岡山の空は白々と明けてきた。
 「岡山を満喫した」
 「満喫しましたね」
 「それでは奈良へ帰るとしよう。このサンライズの切符は落選記念として大事にする」
 「いずれまた」
 「いずれ……あるのかなあ」
 彼らはそのまま東へ取って返した。
 編集者は新幹線で東京へ。
 登美彦氏は新幹線で京都へ、さらに奈良へ。


 そういうわけで登美彦氏が自宅へ帰り着いたのは午前十時だった。
 へろへろで帰ってきた登美彦氏を妻が迎えた。
 「おかえりなさいませ」
 「落ちてしまった」
 「敗北するのもお仕事ですから」
 「……そうとも。そして日はまた昇るサンライズ!」
 「おつかれさまでした。お風呂が沸いてますよ」


 恩田陸さん、受賞おめでとうございます。
 心よりお祝い申し上げます。

 
 蜜蜂と遠雷