登美彦氏、フロンティア文学賞候補作を読み耽る


 一月の終わりである。
 我らが2017年もすでに「十二分の一」を終えた。
 森見登美彦氏は時間に追われるのを嫌悪する者だが、しかし年頭に2017年氏から言われた言葉が頭からはなれない。
 彼はこう言ったのである。
 「すでに新年は始まっている。この確固たる事実を受け容れることです。そして、これまでないがしろにしていた『一月から三月』にこそ、いっそ燃え尽きる覚悟で努力しなさい。なにごともスタートダッシュが肝心。やらねばならぬこと一切を春までに終わらせればビッグな男になれます」
 登美彦氏はカレンダーを見上げて呟く。
 「もう二月か……」


 そんなわけで焦ったり開きなおったりしながら、登美彦氏はフロンティア文学賞の候補作を読み耽っている。
 先日、いくつもの大作が東京からドサッと送られてきたのである。
 残念なことに昨年は「大賞なし」という結果に終わったので、登美彦氏は「今年こそは!」と願いながら読んでいる。選考委員の冲方丁さんと辻村深月さんと会うのは楽しみなことである。
 それから、前々回のフロンティア文学賞を受賞した阿川せんりさんの新作も出た。受賞作『厭世マニュアル』と同じく、第二作『アリハラせんぱいと救えないやっかいさん』にも、「阿川節」というべきものが漲っている。
 どうぞ宜しくお願いします。

 
 

厭世マニュアル

厭世マニュアル

 
 

アリハラせんぱいと救えないやっかいさん

アリハラせんぱいと救えないやっかいさん