10周年の終わり、広島本大賞、「夜は短し歩けよ乙女 銀幕篇」


 2017年の四分の一が終わろうとしている。
 この三ヶ月、森見登美彦氏は近年まれに見る多忙ぶりであった。年明け早々の下鴨神社におけるイベントを皮切りに、直木賞関連のもろもろ、10周年記念イベント、劇場アニメ「夜は短し歩けよ乙女」のもろもろ、テレビアニメ「有頂天家族2」のもろもろ……。
 色々なことがありすぎて、当日誌を更新することもできなかった。


 三月上旬に叡山電車さまの全面協力のもと開催された10周年記念イベント「ぐるぐるミステリーツアー」によって、登美彦氏の四年近くにわたった「10周年」は終了した。時空の歪みは修正され、登美彦氏は14周年目へ跳躍して一気に老けこんだのである。10周年記念作品『聖なる怠け者の冒険』『有頂天家族 二代目の帰朝』『夜行』でお世話になった朝日新聞出版、幻冬舎小学館の皆様に御礼を申し上げる。そしてご応募いただいた皆様に御礼を申し上げる。
 四年も立て籠もれば「10周年」にも愛着が湧く。
 登美彦氏は一抹の淋しさをおぼえている。


 聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫) 有頂天家族 二代目の帰朝 夜行


 さらに、登美彦氏の小説『夜行』が広島本大賞をいただくことになった。
 「尾道をちょこっと描いただけなのに……」
 と、登美彦氏はたいへん恐縮している。
 五月、登美彦氏は授賞式のために広島へ出かける予定である。


 劇場アニメ「夜は短し歩けよ乙女」は四月七日全国公開予定である。 
 来場者特典として「夜は短し歩けよ乙女 銀幕篇」という掌編小説が期間限定で配布される。
 詳しくは公式サイトを参照していただきたい。 
 http://kurokaminootome.com/#news
 この掌編は「先輩から乙女への手紙」「乙女から先輩への手紙」という一対で構成されている。いわゆる書簡体小説である。
 しかし製作委員会という黒幕の悪辣な陰謀によって、公開第一週は「先輩から乙女への手紙」、第二週は「乙女から先輩への手紙」というように期間を区切って配布されることになった。これこそ資本主義の横暴、血も涙もない大人の都合というべきである。原作者としてまことに遺憾でありそのような非浪漫的策略は御免こうむる!と言うべきところを登美彦氏はスンナリ承知して黒幕と手を結んだ。このようにして人間は堕落していく。
 読者諸賢のご寛恕を乞う。
 「銀幕篇」と大層な題名がついているものの、姫りんごのごとき、小さな小さな小説である。
 本篇のほんのオマケとして楽しんでいただければ幸いである。