『夜行』(小学館)

 

夜行

夜行

 
 森見登美彦氏の十周年記念作品『夜行』が刊行される。
 10月25日頃から全国の書店にじわじわと姿をあらわす予定である。


 しばしば登美彦氏は自分の作品のことを「我が子」と表現してきたが、もし『有頂天家族』を「毛深い子」とするならば、この『夜行』は「夜の子」というべきであろう。『夜は短し歩けよ乙女』『宵山万華鏡』に続く三人目の娘のように感じられる。したがって『夜行』は「夜の娘」である。


 登美彦氏には「明朗愉快」な作品が多いが、『夜行』はそういう作品ではまったくない。したがって、アハハと笑いながら読める作品を求める方々は用心していただきたい。
 この作品に明朗愉快なところはどこにもない!
 不明朗不愉快!
 嘘ではない!これは本当!
 ことごとく腑に落ちない出来事が続き、登場人物たちは暗い道を辿り、ミステリーは何一つ解決されず、盛り上がる熱い展開も爽快な大団円もない。最後まで読めば何らかの光明が見えるかもしれないが、それが本物の光明であるという保証はどこにもないし、かえって夜の闇が深まるかもしれないのである。わざわざ本を買ってガッカリするようなことになっては申し訳ないのであり、ある種の覚悟をもって読んでいただく方が作者も読者も幸せになれるにちがいない。
 それゆえに登美彦氏は購入前の「試し読み」をオススメする。


 下記の特設サイトから。
 http://www.shogakukan.co.jp/pr/morimi/