(まえがきより)
「なぜ竹林なのか」と世の人は問うであろう。
京都の某中華料理店において、担当編集者からこのアンソロジー企画を持ちかけられたとき、いささか私は怖じ気づいた。小説家の皆さんに書いてもらう?しかも好きなお題で?自分にそんな資格があるのか?あまりに畏れ多いことである!もちろん即座に断ろうとした。
しかしその瞬間、風にざわめく竹林の姿が脳裏に浮かんできた。そしてふと気がつくと、この企画を引き受けていたのである。
私は子どもの頃から竹林に心惹かれてきた。大学院で竹の研究をし、竹林を刈るだけという無謀なコンセプトで『美女と竹林』という本を書き、『竹取物語』の現代語訳にまで手をつけた。まるで宇宙植物のようなその佇まい、どんどん増える怪物的な繁殖力、彼岸と此岸の境界を思わせる内部空間……それらが私を魅了して止まないのである。というわけで、「竹林小説のアンソロジーを作る」というアイデアはあまりにも魅力的であり、とうてい抗うことはできなかった。この機会を逃せば、こんな得体の知れない本を世に送り出す機会なんて二度とこないだろうから……。
それではみなさん、どうぞ竹林の奥深くへ。
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このアンソロジー企画は二冊同時刊行であり、もう一冊は宮内悠介氏のリクエストによる。
こちらのテーマは「博奕」である!
以下は森見登美彦氏の竹林関連書籍である。