先日、森見登美彦氏は「Sherlock」というドラマを観た。
シャーロック・ホームズを現代のロンドンに甦らせたドラマで、
その豪快なハッタリぶりがたいそうステキなドラマであった。
登美彦氏はワクワクして観たのである。
ドラマは続きが気になるところで終わった。
登美彦氏は唖然とした。
「続きは来年だと!? 冗談言ってら!」
本当に来年らしいと知ったとき、いささか登美彦氏は怒ったという。
しかし待て。
登美彦氏に怒る資格があるのだろうか。
我が身を省みると何も言えないはずだ。
登美彦氏風情は正座して来年を待ってろ。このちんちくりんめが。
そういうきっかけもあり、ホームズ熱が復活した。
登美彦氏のホームズ熱は小学生の頃から始まった。
ここまで長く読んでいる作品も珍しい。作中ライヘンバッハの滝壺に落ちたふりして復活したように、ホームズは忘れた頃にやってくる。登美彦氏はいまだにホームズを卒業していない。
「ホームズを卒業してしまった人がきらいというわけではない」
と登美彦氏は述べている。
「しかし、ホームズを卒業できない人がきらいではない」
このところ、登美彦氏は寝床でホームズをちまちま読む。
「寝る前にホームズの短篇を一つ二つ読むと自律神経を整える効果がある」
と、裏山の和尚さんが言っていたからである。
本当かどうかは分からない。
登美彦氏は作者のコナン・ドイルについても知ろうと思った。
『コナン・ドイル シャーロック・ホームズの代理人』という伝記を読んでみた。
著者はコナン・ドイルの単純さをちくちくと皮肉ったりして、その皮肉がまた上手であるからオモシロイ一方で腹も立ち、「それはちょっとひどい言い草じゃないか、あのホームズの生みの親に対して!」と登美彦氏はわけもわからずドイルの肩を持ったりした。しかし最後まで読み終えると、「とてもエライ普通の人」というコナン・ドイルがちゃんと目の前に現れて、どうしてもその姿を好きになってしまうのである。たいへん読みやすくてワクワクする伝記だったという。
シャーロック・ホームズと同じぐらい、その父親も魅力的な人である。