本日は雛祭りであった。無関係であった。
その夜。
森見登美彦氏は狸がいっぱいたむろしている先斗町の料理屋において、古囃子氏という人物と会談を行ったが、その席上、古囃子氏からチョコレートを贈られた。
男性からのチョコレートなど、心の底から願い下げだと登美彦氏は怒り心頭に発したが、チョコレートは古囃子氏からのものではなく、古囃子夫人からのものであると言われたので怒りのやり場を失った。
チョコレートと一緒に、「ファンレター」といって然るべきお手紙が入っていた。夫の目の前で、その妻からの手紙を読むという味のあるシチュエーションに尻をむずむずさせながら登美彦氏は読んでみた。
「あなたの作品はとてもオモシロイので、そのうちどこかへ監禁して続きを書かせて、足をチョン切るぞゴノヤロウ。おととい来やがれ!」
というようなことが書いてあったので、登美彦氏は恐ろしくて恐ろしくて全部読む能わず。
しかしチョコレートは受け取って、その日のうちに全部喰ったという。
こういうことがあったので、登美彦氏はまたチョコレートを増やした。
バレンタインというものは意外に過酷な道のりだと登美彦氏は知った。氏が鼻孔から血を噴いて荒野に倒れるまで戦いは続くであろう。
そして倒れる時はつねに前のめりだ。
送り主 | 数量 |
---|---|
人妻 | 2 |
(おそらく)人妻ではない) | 2 |
「諸君!モテモテか?・・・火を見るよりもモテモテか?」
登美彦氏はやや疑問形になっている。