登美彦氏、書き終わる


 森見登美彦氏は明け方まで書き物をしていたので寝過ごしてしまい、せっかくの素晴らしい好天に恵まれた一日の大半を棒に振った。
 あまりに切なかったので氏はお気に入りの喫茶店へ出かけて明太子スパゲティを喰った。登美彦氏は学生時代を通して、その店の明太子スパゲティを山ほど喰った。登美彦氏が腹におさめたスパゲティをすべて結ぶと、地球を七廻り半するという。
 地球をぐるぐる廻るスパゲティのことを考えているうちに、日は暮れていく。

 帰途。
 数々の苦難にめげず書き物を仕上げた自分への褒美に、登美彦氏はプレイステーション2のメモリーカードを購入した。これまで登美彦氏は「ワンダと巨像」をやり始めても、セーブすることができなかった。氏は不屈の闘志で、幾度も幾度も巨像を最初から倒していたが、今やいつゲームを止めても、また途中から再開することができるのである。
 「諸君!これは画期的な道具だ。セーブすることさえできれば、すべての巨像を倒す日も近いであろう」
 登美彦氏はそう語った。


 ちなみに氏は十体目の巨像に手こずっている。
 「この巨像の眼がごっつ恐いので、あんまり戦いたくない」
 登美彦氏は少し弱音を吐いた。