登美彦氏、いささか凹む


 森見登美彦氏は、一月半ばから書き進めていた書き物をひとまず書き上げてはみたものの、まったく予想していなかったことにマジメなものになってしまったので、地下室の隅に三角座りをして凹んでいる模様。似合わぬマジメなものを書いてしまった時、氏はたいてい凹むという。そしてその書き物が、マジメな上に、あまり面白そうにも思われぬ時、氏はさらに凹むのである。丑三つ時でもあるので、氏はたいへん眠く、明日の朝起きられるか心配であり、だからなおさら不機嫌になっている。
 「しかし諸君。書いてしまったものは、しょうがない。生まれた子どもを、やっぱり生まれませんでしたと誕生以前へ押し戻すわけにはいかんのだ」
 氏は布団を敷いて呟いた。
 「明日は明日の風が吹く。とりあえず、世の中のすべての難問に対する最大の解決策を実行しよう」
 そうして氏は寝ることにした。