登美彦氏、歌う


 森見登美彦氏は難航しながら、戦友に影響されて考えた自作の歌を歌った。


「25の夜」


小説の原稿と壁ばかり見てる俺

マンションの地下の隅

猥褻な夢を見てる

どうにも苦手な締切やぶりたい

京都駅からすぐそば 編集者がやって来れば

逃げ場もない

しゃがんでかたまり背を向けながら

本当に乗り越えられるのか解らない

予定表をにらむ

そして仲間達は今夜

競作の計画をたてる

とにかくもう締切や締切は

守りたくない

自分の次回作のタイトルさえ

解らずに震えている 25の夜・・・


(*)盗んだバイクで走り出す

起承転結も解らぬまま

暗い夜の帳りの中へ

誰にも縛られたくないと

逃げ込んだダイアリーに

自由になれた気がした 25の夜・・・


(二番以降は省略)


 <注>
 ○実際はそれほど締切に追われていない
 ○実際は編集者に追われてもいない
 ○実際はバイクを盗んではいない
 ○実際はバイクには恐くて乗れない
 ○実際は誰かに少しは縛って欲しい
 ○実際は二十五歳ではない