森見登美彦氏、びっぐうぇーぶと向き合う。


 今を去ること二年前、森見登美彦氏は締切太郎を召還した。
 締切太郎の召還とは「並み居る締切次郎たちを一斉に投げ出す」という荒技であり、人生にそう何遍も使える手ではない。乱用すると信用をなくす。しかし当時の登美彦氏はくたばりかかっていたため、やむを得なかった。
 「複数の敵と戦う場合、決して囲まれてはならない」
 登美彦氏は体勢を立て直しつつブツブツ言った。
 「狭いところへ誘いこんで、一匹ずつやっつける。戦いの基本である」
 そういうわけで、締切次郎たちは一列に並んだのであった。
 つぶらな瞳に涙を溜めて―。


 そして登美彦氏は一匹目の締切次郎をやっつけた。
 『聖なる怠け者の冒険』である。
 現在、登美彦氏は二匹目の締切次郎と戦っている。
 『有頂天家族』の第二部である。
 なかなか愉快な仕事である。
 愉快だからこそジックリやる。
 したがって、いつ終わるのか分からない。


 そんな登美彦氏の机上の戦い(の遅延)とはまったく無関係に、アニメ「有頂天家族」がちゃくちゃくと準備を整えつつある。
 たしかにこれはまったく情け容赦のないことだ。
 「少しは原作者の気持ちも考えてほしいナア」
 登美彦氏は勝手なことを言っている。
 そんなことを言っても、放送時期は変わらないのである。
 

 まず一つ目。
 アニメ「有頂天家族」の公式サイトにおいて、予告篇が公開された。
 こちらで見られる。
 http://www.uchoten-anime.com/
 担当編集者が予告篇だけでウッカリ涙したという充実の予告篇である。
 登美彦氏はこれぐらいでは泣きはせん。そうとも。

 
 二つ目。
 「京都国際マンガ・アニメフェア」というイベントの関連で、アニメ「有頂天家族」が描かれたバスが京都市内を走るという。
 登美彦氏は「ラッピングバス」という言葉を初めて知った。
 もう走っているとのことだが、まだ見ない。


 三つ目。
 秋葉原において、「有頂天家族展」なるものが開催されているという。
 http://blog.livedoor.jp/ioryhamon/archives/6572874.html
 これはさすがに登美彦氏は観に行くことができない。


 四つ目。
 アニメ「有頂天家族」の放送時期は下記の通りである。
 TOKYO MXKBS京都サンテレビ7月7日より毎週日曜日夜10:00〜
 BS11 7月9日より毎週火曜日深夜0:00〜
 キッズステーション7月10日より毎週水曜日深夜0:00〜
 KNB北日本放送7月10日より毎週水曜日深夜1:58〜


 五つ目。
 今週末の日曜日、京都の四條南座において「有頂天家族」のイベントがおこなわれる。
 これはアニメのイベントであり、登美彦氏はオマケみたいなものだが、ともかくフラリと顔を出す。原作者はあまり邪魔をせぬように小さくなっているべきであろう。スペシャルなゲストが原作者というのはスペシャル感に乏しいと思わざるを得ないが、他にいくらでもスペシャルな方々がいらっしゃるためスペシャルなイベントになるのはスペシャル間違いない。そういうわけで安心である。


 こうして眺めてみると、登美彦氏が机上で髪の毛をかきむしりつつ天狗と狸たちの新たな運命に思いを馳せているうちに、何か「びっぐうぇーぶ」的なるものが目前まで来ていたことが分かる。たいへんなことだ。これはきっと、愛すべき文庫『有頂天家族』も羽根が生えたように売れていくにちがいない。 
 もし、このびっぐうぇーぶの最中に満を持して続篇を発表することができたら……
 そんなことができればハンサムきわまりなく、見知らぬ乙女も惚れるというものだ。
 しかし、すでに登美彦氏はハンサムであることを諦めた。
 「びっぐうぇーぶには乗れるだけ乗る」
 登美彦氏は述べる。
 「しかし、敢えて努力はしない」


 そして登美彦氏はこの非ハンサムぶりを抱きしめて逞しく生きていく。
 読者の皆さんのご寛恕を請う。