森見登美彦氏は京都の某雑居ビルの一角において、ついに闇鍋を敢行した模様である。
投入された具材に関する詳細は、公表を差し控える。
当初は参加者たちの(この期に及んで大人げない)大人の配慮もあって、昆布だしをベースにした無難な味わいであった。物足りなさを感じた強者たちが、うちなる衝動に駆られるままに多彩な具材を投入してゆくと、やがて鍋は異次元的芳香を放ちだし、昆布の旨味はもはや行方知れずとなり、鍋全体が謎めいた粘りを帯びた。闇の中の具材たちはとろとろの粘液の中で暴れだし、炬燵は揺れ、疾風吹き、ついには雷鳴が轟いたと思うと、小太りの魔王までが召還された。「ツンデレツンデレ*1」と魔王はひとしきり言っていた。
参加者たちは鍋の廻りでひれ伏し、いたずらに呼び出した魔王に平謝りに謝ってお引き取りを願った。
登美彦氏はウイスキー「白秋」による酩酊をものともせず、タクシーを召還して帰路についたが、たとえ酔いしれていても今宵の教訓は忘れなかった。
「闇鍋をするならば、食べ終わるまで電気を点けてはいけない。ダメ、ゼッタイ!。あとカステラは溶ける。生八つ橋・・・も溶けたかもしれん*2」