http://www.duncan.co.jp/web/stage/melos/
森見登美彦氏の『新釈走れメロス他四篇』におさめられている短篇「走れメロス」が舞台化されている。
言うまでもなく、本当の原作は太宰治である。
登美彦氏は舞台稽古を見に行ったが、「私はこんなに阿呆なものを書いたのですか?」と思うほど阿呆だったという。
以下、登美彦氏によるコメントである。
太宰治の「走れメロス」を現代の京都を舞台にして書こうとしたとき、私の念頭にあったのは、まず第一に太宰の文章だった。「作者自身が書いていて楽しくてしょうがないといった印象の、次へ次へと飛びついていくような文章」である。どうすればこんな文章が書けるというのか。
私は考えた。じっくり書いているヒマはない。多少のアラには目をつむれ。立ち止まって考えたら負けである。とにかく走れ、走りながら考えろ、と。実際のところ私が走ったのは机の上だが、「走れメロス」を書くにあたって、これは我ながら目のつけどころがよかった。登場する京都の学生たちも、彼らの捻転した友情も、晩秋の学園祭に流れる「美しく青きドナウ」も、破廉恥きわまる桃色ブリーフも、すべては机上を走りながら拾い上げたものである。なにはともあれ、走らねばならない。
太宰は机上を走り、私も机上を走った。今ここで、バトンは舞台上の走者に手渡された。きっとスバラシイ走りっぷりを見せてくださるにちがいない。期待せざるを得ないのである。