森見登美彦氏が孤独な救世主のように思案している。
地を埋め尽くすペンギンの群れたちを「いかにして正しき道へみちびくか」と。
そこへ活動漫画版『四畳半神話大系』の宣伝用映像が届いた。
私が、
樋口師匠が、
小津が、
明石さんが、
喋り、
喰い、
笑い、
走り、
叫ぶ。
そのたいへんなおもしろっぷりに、
登美彦氏はめまいがした。
しばらくは「おおう」と呟くのがやっとであった。
登美彦氏は我が子を愛する男だから、自分の小説にはそれなりにおもしろいところやかわいいところがあると自負するものだ。
「それにしたって、それにしたって!」
登美彦氏は声高に叫ぶ。「この活動漫画はおもしろそうすぎるというものだ!けしからん!」
しかし我が子を愛する阿呆な男が、我が子が映像化されたものを阿呆のように褒めても、まるで自画自賛しているように聞こえる。信用されまい。「また登美彦氏が驕り高ぶっているわ」「自分の手柄だと言いたいのね」「彼にはそういう傾向があるのよ、困ったものね」と世間から冷たくあしらわれるのがオチなのだった。
いと哀れなることなり。