登美彦氏の仕事(11/27)


・yomyom vol.18 「京都捻転紀行」 


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 森見登美彦氏が、取材で京都に出かけたときの顛末を書いている。「旅の歓び、ヨム愉しみ」という特集である。
 登美彦氏は東京に住んでいるわけだから、京都に行けば「旅行」と言ってかまわない。誰が文句を言うだろう。しかしながら、登美彦氏が京都へ旅行に出かけるというのは、やっぱりなんだか妙である。ねじくれている。
 そういうわけで、登美彦氏は「捻転紀行」と名付けた。

 
yorimo 長編怪談 「親友交歓」 連載開始


 読売新聞のyorimoというところで、登美彦氏が新しい連載を開始した。
 タイトルは太宰治の短編「親友交歓」から。
 ただし、内容はぜんぜん違うものである。
 以下を参照。
 https://yorimo.yomiuri.co.jp/csa/Yrm0504_P/1221763220086


 登美彦氏はおおむね明朗阿呆な作風で知られているが、つねに明朗阿呆に徹するということはたいへんムズカシイことである。これはなぜかと筆者が考えるに、明朗阿呆に徹していると明朗阿呆があたりまえとなり、あたりまえが退屈を生み、その退屈から逃れるためにさらなる阿呆に阿呆を重ねて、けっきょくは「阿呆の極北」という凄絶な地に赴かねばならなくなるからである。阿呆すぎて作者も読者も振り落とされるのは必定である。
 たまの阿呆が、良い阿呆。
 たとえ玉子ごはんがおいしくても、毎日食べていれば飽きるうえにコレステロールが増えすぎるヨ!という問題に近い。


 登美彦氏は脱コレステロールのためにときどき怪談を書く。
 怪談を書くのは登美彦氏にはムズカシイが健康のためにはやむを得ない。
 『きつねのはなし』もそうであるし、『新釈走れメロス他四篇』の一部はそうであるし、また『宵山万華鏡』の一部もそうかもしれない。最近の連載では「夜行」がそうだった。
 明朗阿呆なものに飽きれば怪談を書き、怪談に飽きれば明朗阿呆なものを書く。
 これが登美彦氏のおおよその仕事である。


 「親友交歓」において、登美彦氏は長い怪談を書くことにした。
 長いものだから、最終的にどんなところへ辿り着くのか登美彦氏は知らない。
 しかしそれはいつものことではないか。