筆者は森見登美彦氏の近況をここに書くのを怠っていた。
しかし「ブログを更新することを怠る」というのもまた、
一つの高級な趣味である。
これだけブログというものが世に氾濫し、
さらにはツイッターというへんてこなるものまで世に氾濫している昨今、
あえて何も発信しないということも大切である。
「ワタクシはいつでもブログを更新することができるけれども、嗚呼それなのに、私はわざとだれにともなく意地悪をして、あえて更新しないでみたりするのであります。神様おゆるしください…」
という背徳的な遊びにふけることもできよう。
断固として、書かない。
締切からの自由。
それが筆者の愉しみである。
登美彦氏は先日、神山健治監督と会った。
『東のエデン』の劇場版が完成したからである。
中華料理店である。
過労気味で肉体的に弱っていた登美彦氏はすっぽんスープをすすっていた。
そうすると神山監督が「つぶやいていいですか?」と言った。
「どうぞどうぞ」
神山監督はぷつぷつぷつとツイッターでつぶやいていた。
「なるほど、こういう感じか」
登美彦氏は納得し、ふと神山監督のまねをしてつぶやいてみたくなった。
人がやっているのを見ると、やってみたくなるのである。
しかし、もし登美彦氏がつぶやき始めると、
ただでさえ更新されないこの日誌を更新することはなくなるかもしれぬ。
それだけならば大して害はないが、
つぶやくのに夢中で小説すら書かなくなるかもしれない。
ぷつぷつぷつぷつ…
登美彦氏が小説を書かないでつぶやくだけになれば、
登美彦氏はもはや小説を書く人ではない。
登美彦氏はつぶやく人である。
そうなれば彼自身も困るし、編集者の人たちも困る。
だから登美彦氏はつぶやきたいところをグッと我慢する。
登美彦氏は本日、ヨーロッパ企画の上田誠氏と対談をした。
次男が活動漫画化されるためである。
上田氏がふっくらしていることを、登美彦氏は鋭く見抜いた。上田氏はあまりに多忙であるために、ふっくらしてしまったのだと言った。そしてあいかわらず、はにかんでいるのだった。はにかみながら「風雲たけし城」について語るのだった。
今日もはにかみはにかみ、上田氏はふっくら働く。
『四畳半神話大系』は上田氏や湯浅監督をはじめとする方々の努力により、ちゃくちゃくと成長している。
ありがたいことである。
そうして登美彦氏は帰宅する。
机に向かう。
十番目の子どもをなんとか世に送り出すべく。
ペンギンたちを世に送り出すべく。
しかしペンギンはまことによちよちとして、歩みがおそい。
「がんばれがんばれ」
登美彦氏は言う。