登美彦氏、口走る。


 森見登美彦氏は、竹熊健太郎氏の名著『篦棒な人々』を読んで以来、「篦棒」という言葉が気になってしかたがないという。
 ヘンテコな言葉である。
 辞書を調べると、「便乱坊」という妙な言葉まで出てくるのである。
 なによりも語感がスバラシイというのが登美彦氏の意見だ。
 「唇で二度ハジケル感じがステキな言葉だ!」
 登美彦氏は言っている。


 あんまりステキなので、登美彦氏は部屋でひとり叫んでいる。
 「ベラボウ!ベラッボウ!」


 叫んでいるうちに、
 登美彦氏は「ベラボウ」と「ブラボー」の区別がつかなくなるという神秘的な体験をした。


 「そうであったか!」
 登美彦氏は納得した。
 「篦棒とは、ブラボーであったのか!」