恋文の技術 第十一話「大文字山への招待状」
十一月五日(森見登美彦より守田香織宛て)
拝啓
日に日に秋の深まる候、いかがお過ごしでしょうか。
小生はたいてい机の前でふくれております。
先日、『きつねのはなし』という本ができ上がりました。
書店で見かけることなどございましたら、「売れろ」と念じて頂ければ幸甚に存じます。
刊行記念のサイン會もございます。人前に出るのは恥ずかしいですから、影武者をつかうことになるでしょう。
お兄さんの守田一郎君はクラブ時代から私の影武者気取りでしたから、彼に依頼しようと思うのですが如何?
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『恋文の技術』も、残すところ、あと一回となった。
「さてどうなることやら」
登美彦氏は言っている。「誰か教えてください」