登美彦氏、ハリーポッターを観る。

 

 登美彦氏は「ハリーポッターと炎のゴブレット」を観た模様。
 前回までの話をどんどん忘れてゆくので、氏は登場人物に馴染むのに四苦八苦したという。「ロード・オブ・ザ・リング」の際にも同じ苦悩を味わったと、氏は告白した。
 「王の帰還を観る頃には、なぜこのホビットたちは旅に出たのか分からなくなっていた。ハリーポッターを観るにあたって、今後どうなるか見当もつかない」
 氏は述べた。
 「今から楽しみである」
 

 登美彦氏は、自分が雑誌に載せている連作ですら、前回までの経緯をまともに確認しない、ひたすら前向きで前のめりで真摯でモテモテナイスガイな生き方を貫いていることで知られる。その結果生じた矛盾を指摘されると、「言うだけ野暮だ」と言ってのけ、比叡山の方角を向いてポカンとしているという態度は、近年まれに見る前向きぶりとして(出町柳界隈の鴨川以西で)高く評価されている。
 映画を観る際の氏の態度も、まったく同様であると考えてよい。


 登美彦氏に映画の感想をたずねた。
 「三つ印象に残ったことがある」
 氏は答えた。
 「一つ目は映画を観ていない人に失礼だから言えない。二つ目はワタクシの沽券にかかわるから言えない。最後の一つは―」
 氏はしばし黙り込んだ。
 やがて深刻な顔で口を開いた。
 「ハーマイオニーが美人になっていた」
 ―(勢い込んで)今後の方針は?
 「我々としては、今後も前向きに検討しつつ、善処してゆきたい」