森見登美彦氏、アニメ「有頂天家族」放映をうろうろして待つ。


 今日は七夕である。
 おりひめとひこぼしが何かしているのである。


 今宵、アニメ「有頂天家族」の放映が始まる。
 今はまだ午後九時十五分である。
 奈良にいる登美彦氏は、孫の運動会を見学に来た祖父のように、ソワソワと落ち着きがない。
 テレビはKBS京都にチャンネルを合わせている。
 少し離れた滋賀県の某温泉宿では、登美彦氏の両親が放映開始にそなえて仮眠をとっている(と先ほど連絡が入った)。


 もちろん登美彦氏は、すでに第一話を何度も観ている。
 しかし本当にテレビで流れているところを、曇りなきマナコで確認するまでは油断できない。ひょっとすると登美彦氏以外の関係者一同が「あたかもテレビで流れる風」を装っていただけかもしれないではないか。なんらかの陰謀をめぐらし、登美彦氏に「テレビで放送する」と思いこませていただけかもしれない。そんなことをしていったい何の得になるというのか。じつに油断できない人たちである。


 というようなことを考え、今まさに登美彦氏は、原作者としての数少ない仕事を為さんとす。
 「テレビで観るまでがお仕事です」