- 作者: 朝井リョウ,ほか
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/09/07
- メディア: 文庫
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森見登美彦氏は、月に一度、研究室時代の先輩と飲みにいく。
行く先は京都市内の賑やかな居酒屋であるが、ここでその名を明かすことはできない。ただでさえ混んでいる店が予約できなくなると、月に一度の貴重な楽しみが失われるからである。嗚呼、どれほどその店は先輩と登美彦氏の安息の場所であることか!
登美彦氏の仕事場で落ち合った二人は、形式上「どこへ飲みにいくか」を相談する。しかし結論は最初から決まっているのだ。
「今日もあそこでいいですかね?」
「もちろん!」
そうして出かけていくのである。
その店の片隅で酒を酌み交わしていたとき、先輩は叫んだ。
「この店は僕のペースメーカーなんだ!」
なんのペースなのかはよく分からないが、それほど大事な店だと言いたかったのであろう。もしも「予約が取れない」ということになれば、先輩の人生はめちゃくちゃになるのだ。それほど素晴らしい店なのである。
飲みながら登美彦氏はときどき愕然とする。
出てくるもの出てくるもの、美味しくないものが何一つない。机上は見渡すかぎり美味しいもので埋め尽くされている。世界はこんなに美味しいものに満ち溢れていたというのか。森羅万象が美食であろうか。
「世界万歳!」と叫びたくなる。
月に一度の「口福」がその先輩を、そして登美彦氏を支えている。
というような話は、この文庫にはおさめられていない。
登美彦氏が書いたのは以下の四つである。
・ベーコンエッグ
・父の手料理
・無人島の食卓
・おいしい文章
ほかにも大勢の方が食について語っている。
執筆者の中にはあの万城目学氏もいる。