登美彦氏、人前で美女と喋る。

 
 森見登美彦氏は「うーん」と唸っている。
 そして、まるで試合前のボクサーのように座っている。


 「そんなことより!そんなことより!」
 一日に一匹ずつ発生する小さな締切朝日次郎が、登美彦氏のまわりを飛び跳ねている。
 「筆のすすみ具合はどうなの?ねえねえ、どうなの?」
 登美彦氏は眉間を指で押さえる。「待て」
 「ねえねえ!」
 「待てというのに」
 登美彦氏は録画しておいた「あらびき団」を観ている。
 登美彦家ではついにブルーレイレコーダーDIGAを購入したのだ。
 もちろん、この素晴らしい文明の利器を導入した最大の目的は、
 神山監督の「東のエデン」を観るためである。
 「それにしても、まさかアニメで『ジョニー』という言葉を(人名の意味以外で)聞くことになろうとは。。。」


 登美彦氏が真剣に「東のエデン」を観ていると、
 締切次郎がうろうろする。
 そして「朝日新聞の果糖さんに言いつけるから!」などと言う。
 「言いつけたければ言いつければいい」
 登美彦氏は開き直った。「果糖さんなんか怖いものか」
 「またそんな風に強がるんだから!」
 「いいのだ」
 「原稿が間に合わなかったら、果糖さんに書いてもらうから!」
 「なに!」
 「オ○○イとか○ッパ○とか、そういうことをたくさん書いてもらうから!」
 「それは、すでに、たくさん書いた。もうじゅうぶん。。。」
 「それよりも、もっともっと、たくさん書いてもらうから!」
 「いくらなんでも、それはまずい」
 

 登美彦氏はやむを得ず机に向かう。
 そうしてもやもやと考える。
 「アッ!」と言う。


 ここで読者の方々にお知らせである。
 七月頃、人前で話すのが苦手な登美彦氏が人前に出て喋る。
 すべては次女のためかと思いきや、それだけではない。
 理由は以下の場所へ行けばおわかりになるだろう。


 お知らせ(集英社のサイト)
 http://www.shueisha.co.jp/morimi/

 
 「どうも申し訳ございません。色々な意味で!」
 登美彦氏はぶつぶつ言う。


 そうして気がつくと、妻と締切次郎が部屋の隅でくるくる踊っている。
 「分かったから!」
 登美彦氏はまじめに机に向かう。
 「分かったから静粛に!」