登美彦氏、映画を観る。


 森見登美彦氏は行き詰まった。
 これ以上ないほど行き詰まった。
 しかも発熱した。


 発熱したので、とりあえず一切を棚上げして、登美彦氏はぐうたらする。
 そして衝動買いしたDVDを鑑賞する。


砂の器 デジタルリマスター 2005 [DVD]


 この映画は幾度も観ているので、「まさかこれだけ観ていれば泣きはすまい。余裕である」と登美彦氏はタカをくくっていた。
 しかし、最後にはやっぱり滂沱の涙を流していた。
 「完敗です」
 登美彦氏は土下座してDVDに謝罪した。
 「緒形拳の巡査が登場する場面になると、もうそれだけで泣いてしまうのである―」