森見登美彦氏は行き詰まった。
これ以上ないほど行き詰まった。
しかも発熱した。
発熱したので、とりあえず一切を棚上げして、登美彦氏はぐうたらする。
そして衝動買いしたDVDを鑑賞する。
この映画は幾度も観ているので、「まさかこれだけ観ていれば泣きはすまい。余裕である」と登美彦氏はタカをくくっていた。
しかし、最後にはやっぱり滂沱の涙を流していた。
「完敗です」
登美彦氏は土下座してDVDに謝罪した。
「緒形拳の巡査が登場する場面になると、もうそれだけで泣いてしまうのである―」