登美彦氏、原稿を送る


 森見登美彦氏の少々の手違いのため、〆切が玉突き事故を起こしている。
 それでもなお、登美彦氏は原稿を送り続ける。
 「大人たちは妄想を捨てろ捨てろというが―」
 登美彦氏はふんふん歌いながら原稿を送る。「俺はいやなのさ!」

 
 しかし書くそばから原稿がどこかへ行ってしまうことを、愚かな登美彦氏はまだ恨みがましく思っており、こんな歌を歌いだした。


 ある晴れた昼下がり
 京都の地下室で
 キーボードがカチャカチャ
 小説ができていく
 可愛い小説
 売られてゆくーよー
 可哀想な瞳で見ーてーいーるーよー
 どなどなどーなーどーなー
 添付ファイルつーきーでー
 どなどなどーなーどーなー
 メールが飛ぶよ

 
 「オチはないが、気にするな!」
 登美彦氏は誰にともなく言った。「いつものことだ!」