登美彦氏は遠野を目指す(その二)


 森見登美彦氏は遠野の町に滞在。朝風呂に入って、朝飯を三杯おかわりしたことから、登美彦氏が上機嫌であったことがうかがい知れる。しかし宿から外へ出れば、聞いたこともないほどの烈風が雪を町へ叩きつけ、トルメキア軍の来襲もかくやと思われる轟音がのどかな町を覆う。氏は令弟とともに、しばし「風の谷のナウシカ口頭再演」に熱中して寒さを忘れんと図ったが失敗す。その容赦ない寒さはより過酷さを増すばかりで、登美彦氏一行は辛酸を舐めた。市立博物館が休館と知ってほぞを噛み、ショッピングセンターにて防寒着を買いたす。遠野探検。コンセイサマを眺める。髪を吹き散らされながらデンデラ野に立ちつくし、己が老後について思いを馳せる。カッパ淵のそばにある「カッパ狛犬」を凝視する。カッパの出現を見逃さぬためにケーブルテレビのカメラが設置されていることを知って面白がる。囲炉裏端にて、ザシキワラシやオシラサマに関する昔話を聞く。夕暮れ、遠野放浪で冷え切った身体を大浴場にて温め、座敷の隅にて酒宴となす。「この宿はまるで極楽のようだ!」と登美彦氏は述べた。ケーブルテレビをつけても「カッパ中継」は見つからず。かわりにアニメ「ベルサイユのバラ」を観る。