「25の夜」(完全版)
小説の原稿と壁ばかり見てる俺
マンションの地下の隅
猥褻な夢を見てる
やりようのない締切やぶりたい
京都駅から数駅 編集者がやって来れば
逃げ場もない
しゃがんでかたまり背を向けながら
本当に乗り越えられるのか解らない
予定表をにらむ
そして仲間達は今夜
競作の計画*1をたてる
とにかくもう締切や締切は
守りたくない*2
自分の次回作のタイトルさえ
解らずに震えている 25*3の夜・・・
(*)盗んだバイク*4で走り出す
起承転結も解らぬまま*5
暗い夜の帳りの中へ
誰にも縛られたくないと
逃げ込んだダイアリーに
自由になれた気がした*6 25の夜・・・
冷たい風 冷えた体 人恋しくて
仕事帰りあの娘の横を
サヨナラつぶやき 走り抜ける
闇の中 ぽつんと光る 文房具店*7
千数百円で買えるぬくもり
お気に入りの手帳握りしめ
書き下ろしの結末は解らないけど
それでも俺は将来さえずっと
書いて下ろし続ける
大人たちは妄想を捨てろ捨てろと言うが
俺はいやなのさ
骨太なリアリティが小説のすべてならば
なんてちっぽけでなんて意味のない
なんて無力な 日本ファンタジーノベル大賞*8
盗んだバイクで走り出す
クライマックスも解らぬまま
暗い夜の帳りの中へ
吸い飽きた煙草をふかし
原稿を見つめながら
自由を求め続けた 25の夜・・・
(*)repeat(計三回まで)
読者諸賢、くれぐれも真剣に読まれぬよう。
真面目はダメ、ゼッタイ。
*1:参照→http://home.att.ne.jp/iota/aloysius/someone/days/note/200506.html
*2:実際の登美彦氏は血反吐を吐いても締切を守る正義の人である
*3:登美彦氏は25歳ではない
*4:登美彦氏はバイクには乗れない
*5:登美彦氏は起承転結を作るのが苦手である
*6:あくまでそんな気がしたという
*7:登美彦氏は止める止めると言いながら行くのを止めない
*8:日本ファンタジーノベル大賞は無力ではない