登美彦氏、締切次郎をジッと睨む


 森見登美彦氏は予定を睨んでいた。
 予定というか締切次郎たちを。


 登美彦氏は呟く。
 「諸君はどういうつもりか。そんなにいちどきにやってきても困るぢゃないか。もう少しゆったりと考えて来れないものかね?」
 十二月から来年春までに、締切次郎たちがぎゅっと集まり、そのつぶらな瞳で登美彦氏を見つめているのだった。ちっとも可愛くはないのである。
 この冬を乗り越えるのは容易ではない。


 締切次郎があまり一カ所に集まると、自然発火する恐れがある。 
 森見家はそろそろ火災の心配をしなくてはならない。


 「もう締切次郎を増やしてはだめ、絶対!」
 登美彦氏の妻がぷんすかして言った。
 「いつもそうやって連れて帰ってくるのですから!もういっぱい!もうたくさん!」
 「しかし、しかし……」
 登美彦氏は言い訳の言葉を持たない。
 まるで捨て猫を拾ってきた小学生のようなものである。