森見登美彦氏は述べる。
「華やかなアンソロジーの軒先を借りて、久々にこっそり世の中にお目見えする。自分の小説が載った単行本が出るのは、じつに一年と二ヶ月ぶりである。ありがたやありがたや。ひとやすみひとやすみ」
歩く乙女。
「そのお酒は「偽電気ブラン」というのです。電気でお酒を作るなんて、いったい誰がそんなオモチロイことを思いついたのでしょう。私は好奇心で一杯になるあまり、木屋町の路上でぱちんと弾けそうになりました。」
浴衣姿の樋口氏
「我々を信用しちゃいけないよ。我々は得体が知れないよ」
タダ酒を飲む技術を駆使する羽貫さん
「先斗町最高!」
追う男。
「これは私のお話ではなく、彼女のお話である。
役者に満ちたこの世界において、誰もが主役を張ろうと小狡く立ち廻るが、まったく意図せざるうちに彼女はその夜の主役であった。そのことに当の本人は気づかなかった。今もまだ気づいていまい。
これは彼女が酒精に浸った夜の旅路を威風堂々歩き抜いた記録であり、また、ついに主役の座を手にできずに路傍の石ころに甘んじた私の苦渋の記録でもある。読者諸賢におかれては、彼女の可愛さと私の間抜けぶりを二つながら熟読玩味し、杏仁豆腐の味にも似た人生の妙味を、心ゆくまで味わわれるが宜しかろう。
願わくは彼女に声援を。」