人形劇団クラルテ(チケットなど)
http://www.clarte-net.co.jp/
「人形芝居 有頂天家族」の紹介はこちら
http://uchoten-kazoku.tumblr.com/
先日、森見登美彦氏は大阪住之江の人形劇団「クラルテ」を訪ねた。
少しだけ練習風景を見せてもらうはずだったが、ふと気がつくと登美彦氏は通し稽古を最後まで観ていた。それぐらい面白かったということである。登美彦氏が見たのはあくまで通し稽古なので、本番はいっそう面白くなるはずだ。
「これは期待せざるを得ない」
と、登美彦氏は述べている。
登美彦氏の毛玉小説『有頂天家族』は、これまでにラジオドラマ、アニメ、舞台というように、さまざまなものに化けてきた。いかにもタヌキ小説らしく変幻自在、こんどは人形芝居に化けるのである。
登美彦氏は人形芝居をほとんど観た記憶がなく、親指人形的なものがもぞもぞする「ちんまりしたもの」を想像していたが、当然のことながらそんな親指スケールではなかった。天狗が飛び上がったりタヌキが転がったりするたびに、劇団の方々は舞台を右から左へ、上から下へ、前から後ろへ、あっちこっちへ飛びまわる。たいへんダイナミックであった。人形たちにインパクトがあるので、はじめは「コワッ」と思うが、見ているうちに表情が見えてきてかわいくなる。ちんちくりんの怪獣チックな矢二郎カエルが登美彦氏の気に入った。
「人形芝居って、ちんまりしてるんじゃないの?」
そう思う人にこそ見てほしい、と登美彦氏は述べている。
「全然ちんまりしていない。大活劇」
「矢一郎が熱い。泣ける」
「弁天と矢三郎の間柄がアニメよりもみずみずしい」
「金閣と銀閣は表現のジャンルを越えて安定している。安定して阿呆だ」
「叡山電車、すごいですなあ」
というようなことが登美彦氏の呟きであった。
ほかのオモチロイ点はぜひとも自分の目で確かめていただければ幸いである。
登美彦氏は劇団の人たちとお喋りしてから、食べるのが可哀想になるようなタヌキケーキを一刀両断して食べ、クラルテをあとにすると、ニュートラム(南港ポートタウン線)に乗った。これは登美彦氏が「子どもの頃に夢見た未来がもはや古びた」みたいな味わいのある乗り物である。
やがてコスモスクウェアにつき、登美彦氏は満足して奈良へ帰った。