登美彦氏、三角に座る


 「(クリスマス)明けましておめでとう!」
 登美彦氏は言った。「しかし、気づいたら明けていた」


 「噂では、年末のこれぐらいの時期になると、そろそろオーソージなる儀式を行わなければならないらしい。もしそれを怠ると、年が越せないというから恐るべきことだ。これはすなわち、十二月三十一日に時空の割れ目に突き落とされ、永遠に繰り返される大晦日にとじこめられるということを意味する。そうなれば繰り返し紅白歌合戦を見て、無限に年越し蕎麦を食わねばならない」
 登美彦氏は語った。
 「うかうかしておれんぞ、諸君!」
 そして氏は大掃除をすることにした。


 登美彦氏は乱雑きわまる部屋の真ん中に、校庭におきざりにされた小学生のように三角座りをしていた。目前のミッションを遂行するよりも前に、まず活力をつける必要がある。
 登美彦氏は煙草を吸い、きびだんごを食べた。
 きびだんごは非常に美味かった。
 こんなに可愛くかつ美味い食べ物はこの世に他にないだろうと登美彦氏は考えた。
 「きびだんごを主食にして生きねばならぬとしても、私はそれを潔く受け容れるであろう。ばっちり覚悟はできている」
 登美彦氏は呟いた。「いや、さすがに無理だ」


 じっくり活力をつけながら妄想にふけっているうちに、時は過ぎていた。
 ワイルドかつ波瀾万丈の明日に備えて、氏は眠らなければならなかった。
 氏はもうしわけ程度に、本を積み重ねて空間を作ってみた。少し片づいたように見えた。いや客観的に考えて、そこは明らかに片づいていた。ほんの僅かな移動だけで劇的な効果が上がったので、氏は己の手腕を誇らしく思った。


 「今日はここまで!」
 氏は宣言した。