「パピルス」(幻冬舎) 15号


 有頂天家族 第二部


  「二代目の帰朝」


 洛中でうごうごする狸たる私に、散りゆく桜の淋しさを杯盤狼藉で紛らわす人間たちを嗤う資格はない。花吹雪の下で浮かれる人間に交じって、狸もまた浮かれるからである。一寸の虫にも五分の魂、たとえ毛深い狸といえども観桜の妙味を知る。狸はいつだって人間をまねたがる。


 桜は新たな出逢いの季節を告げるものでもある。
 洛中の桜が白い花弁を降らす頃、花弁に交じって天空から不思議な品々が降り注いだ。
 それは「天狗つぶて」と言われた。
 前年末の大騒動以来、寝床に籠もって長い冬をやり過ごした狸たちの眠りを醒ます天狗つぶては、慌ただしくも賑やかな一年の始まりを告げ、長年の不在によって半ば伝説と化していた一人の天狗の帰還を、広く洛中に知らせることになる。


 有頂天家族第二部始動記念エッセイ


  「すべてのアカダマは昭和へ通ず」


 ■特別対談


  森見登美彦×うすた京介



 森見登美彦氏は以下のように語っている。


 「うすた京介氏は、『セクシーコマンドー外伝すごいよ!!マサルさん』を読んで衝撃をうけて以来、ずっと私がその作品を読み続けている人である。なんだか不思議な流れで対談させてもらえるということになったので驚いた。そしてうすた氏がまるで海賊みたいに格好良く、そして親切であったことに驚いた。例によって空回りしてあまり有意義なことを喋ることができなかったが、しかし諸君、これはいつものことだから気にしない。うすた氏となごやかに喋ることができたというだけで、良い思い出ができた。誌面で思い出づくりをしてよいわけではないが、できてしまった思い出は誰にも消させない。そしてうすた氏から頂いたサイン(私の分、弟の分、妹の分)によって、私は弟や妹からさらなる尊敬を得ることもできたのである。そういうわけでうすたさん、ありがとうございました」