登美彦氏、うめく。


 引っ越した部屋が片づかないので集中できず、さらに文章に悩み、時間はなく、睡眠不足でふにゃふにゃとなり、取材を受け、編集者の人と会い、ようやく眠れると思ったら目がさえて眠れなくなったので、登美彦氏はうぬうぬうめいて段ボールの隙間をうごうごした。睡眠が不足してくると登美彦氏は黒モリミマンに変身する。おもな能力は八つ当たりだ。
 登美彦氏が段ボールの隙間を抜けていくと、小太りのふわふわ太郎(不運の神・不機嫌の神)が新居の隅へ遠慮がちに座っているではないか。
 「こんにゃろう!」
 登美彦氏が蹴飛ばすと、ふわふわ太郎は泣きべそをかいてよだれを垂らした。「だって居心地がよいのだもの」
 「おまえまで引っ越してくることはないのだ!」