登美彦氏、「『ペンギン・ハイウェイ』のできるまで」について語る


 ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)


 3月16日に登美彦氏はイベントをする。
 「『ペンギン・ハイウェイ』のできるまで」 
 と題して、そういうことを担当編集者と語る予定である。
 担当編集者と語る、というのはちょっと珍しい。
 詳細は下記を参照。
 生駒市公式ホームページ
 http://www.city.ikoma.lg.jp/event/detail7252.html


 森見登美彦氏はここのところ仕事をしている。
 しかしながら、いくら仕事をしたとしても、
 完成するまでは誰にも見えないのだから、何もやっていないに等しい。
 一切は無である。
 ただでさえ小説などというものは社会的にふわふわしているもので、
 書きかけの小説などというものはさらにふわふわしているのである。
 どこへでも飛んでいってしまいそうな柔らかい不確かなものである。
 「どうせ登美彦氏は奈良でふわふわ遊んでんだろ?」
 「飛火野に鹿と並んで尻の日光浴でもしてんだろ?」
 と思っている人もあるかもしれない。
 「ちがいますよ」
 登美彦氏は呟く。
 「今はまだ無ですが、ちゃんとやってますよ」
 アンパンマンは愛と勇気だけが友だちの孤独に耐える人(パン)だが、 
 登美彦氏はそんなに立派な人物ではない。


 クライマックスというのは実に難儀である。
 登美彦氏は十年たってもそういう計算が下手クソで、いつも狙いをはずしている。
 「このあたりがクライマックスだな」と思っていると、
 じつはその向こうにまたクライマックスがあるのだ。
 坂道を登り切ったと思ったら、見えてなかった新たな坂道が視界に入る。
 結果、分け入っても分け入ってもクライマックス!
 こんなのが長く続けば、へたばって当然である。
 「どこまでいっても終わらん!!」と登美彦氏は呻いている。
 3月16日までにこの苦闘が終わっていることを祈るのみ。