森見登美彦氏、アニメ「有頂天家族」終了のことを想う


 すでに秋である。


 森見登美彦氏はこの夏のことを振り返っている。
 アニメ「有頂天家族」は登美彦氏に良い想い出をたくさんもたらしてくれた。南座のイベントに始まり、監督たちとたくさん喋り、富山のPAワークスへ遊びに行ったり、監督のサイドカーにのせてもらったり、人生で初めてオーディオコメンタリーに出たり、諏訪部氏と能登さんを京都に迎えて倉の中にある酒場でお酒を飲んだり、下鴨神社で皆さんと対談したり、とにかくさまざまな経験をしたのであった。
 アニメの世界は豊かに膨らんだが、ここで原作の世界に目を転じると、登美彦氏は渋い顔になる。
 続篇の執筆はなかなか進まないからである。
 まさかアニメが終わりを迎えてもなお、終わりが見えていないとは。
 これは登美彦氏が思い描いていた秋ではない。
 「別の宇宙に迷いこんでしまったに違いない……宇宙が悪い、宇宙が……」
 しかし、筆者はここで登美彦氏のために弁明しない。
 登美彦氏は土下座する。
 「これはもう、しょうがない。遅れて申し訳ありません」
 なにとぞ読者の方々にはご寛恕いただきたい。


 こういう手順を踏まねば、あまりにも申し訳なく、うかうかと日誌も更新できないのである。しかし、登美彦氏の大きな仕事は目下これだけである。まさか完成が四半世紀先になるなどということはない(はずである)。


 続篇のことはともかく、アニメ「有頂天家族」のDVDとblu-ray、およびマンガが発売される。
 これらが売れると登美彦氏がどれぐらい儲かるかというと、それは複雑な計算と契約書の向こう側にある事柄なので、登美彦氏にはよく分からない。とはいえ、熱意をもって仕事にあたった方々にはぜひ儲けていただきたい、と思っている。
 「買ってもいいけど、どうしようかな?」
 と宙ぶらりんな気持ちの方は、思い切って買うべきである。ぜひとも。
 DVDのコメンタリーにおいて、登美彦氏も監督たちとぷつぷつ喋ったりしている。
 これらの売り上げ如何によって、東京のどこかの冷んやりした会議室で議題に上がっている登美彦氏の他作品に関連する企みについて、会社の偉い人が「いてもうたれ!」と言うかもしれない。 


 


 


 アニメ「有頂天家族」は今週末に最終回を迎える。
 それに先んじて六本木で上映会があるのはすでに公式ページでお知らせのあった通りで、当日は登美彦氏も東京へ出かける。
 「参加される方々は会場でお会いしましょう」
 と、登美彦氏は言っている。
 「続篇のことについて触れられたら、『申し訳ありません!』と言いますぞ」