今年はじめに京都で開催された秘密会談において、万城目氏は「テレビドラマの『鹿男あをによし』をぜひ観るように!」と登美彦氏に強く迫ったが、登美彦氏は原作者本人からすすめられたにもかかわらず、当初の決意を変えることはなかった。
ここに登美彦氏の「うつわ」の限界をみてとることができよう。
しかし。
登美彦氏がそうやって意地を張ってふくれている一方で、万城目氏はちゃくちゃくと策謀をめぐらせていたのだ―『鴨川ホルモー』の映画化、そしてエッセイ集の発売。
万城目氏はその最新刊を登美彦氏に送ってくれた。
エッセイ集『ザ・万歩計』は、表紙にたくさんの万城目氏がうごめく不気味このうえない本であり、善良なる読者の安眠をさまたげることうけあいである。
そんなおそるべき表紙の中にある一服の清涼剤は、万城目氏に鉄拳をお見舞いする「登美彦氏の右腕」であろう。
これを「友情出演」と呼ぶべきか、否か。
ぜひとも書店で確認されることをおすすめする。
買うか買わないかは、あくまで読者の自由である。
「自由を我らに!」と登美彦氏は言っている。
『四畳半神話大系』(角川書店)
森見登美彦氏はついにできあがった「小型化した次男」を受け取った。
そしてしみじみと嬉しかった。
登美彦氏は何一つ特筆すべき趣味のないつまらない男と言われることが多いが、しかし「小型化した自分の本を撫でまわす」という立派な趣味を持っている。
「これほど楽しいことが他にあるならば教えてくれたまえ!」
登美彦氏は言っている。
しかし、おそらく他にもあるであろうことは、本人もうすうす勘づいている。
『四畳半神話大系』が、登美彦氏の著作中、もっとも偏屈であることはたしかだ。
苦労して書いたわりには文句を言われることが多い、可哀相な子であることもたしかだ。
小型化して懐にもやさしくなったことに免じて、その偏屈ぶりをおおらかに受け入れると、きっと良いことがあるだろう。
少なくとも、登美彦氏は嬉しがるであろう。
解説は日本ファンタジーノベル大賞の大先輩である佐藤哲也氏によるものである。
人は誰でも、「己を褒めてくれる人を尊敬することによって己をさらに高みへ引き上げる」という繊細微妙な詐術を使うものだが、そういう詐術をできるだけ割り引いて考えても、やはり登美彦氏は佐藤氏の作品を素晴らしいと思っている。佐藤氏の解説を得られたことで、登美彦氏はたいへん幸せになったという。
小型化した次男は、今週後半頃から書店に並び始める模様である。
買うか買わないかは読者の自由である。
「小型化したので、懐にもやさしく、場所も取らない」とだけ述べておく。
『夜は短し歩けよ乙女』(角川書店)
さらに登美彦氏は二次元化した長女も受け取った。
マンガ化についてのコメントは、巻末に登美彦氏が書いているので、ここに多くは述べない。
「可愛い」
と、だけ述べる。
「可愛い」
と、もう一度述べてもよいだろう。
二次元化した長女がいつごろ書店に並び始めるのかは聞きそびれてしまったので、
ここで詳しいことは述べられない。
そして繰り返すが、買うか買わないかは読者の自由である。
「懐にやさしく、小型化した『四畳半神話大系』とあわせて読むと楽しい可能性がある」とだけ述べておく。