森見登美彦氏はついにできあがった「小型化した次男」を受け取った。
そしてしみじみと嬉しかった。
登美彦氏は何一つ特筆すべき趣味のないつまらない男と言われることが多いが、しかし「小型化した自分の本を撫でまわす」という立派な趣味を持っている。
「これほど楽しいことが他にあるならば教えてくれたまえ!」
登美彦氏は言っている。
しかし、おそらく他にもあるであろうことは、本人もうすうす勘づいている。
『四畳半神話大系』が、登美彦氏の著作中、もっとも偏屈であることはたしかだ。
苦労して書いたわりには文句を言われることが多い、可哀相な子であることもたしかだ。
小型化して懐にもやさしくなったことに免じて、その偏屈ぶりをおおらかに受け入れると、きっと良いことがあるだろう。
少なくとも、登美彦氏は嬉しがるであろう。
解説は日本ファンタジーノベル大賞の大先輩である佐藤哲也氏によるものである。
人は誰でも、「己を褒めてくれる人を尊敬することによって己をさらに高みへ引き上げる」という繊細微妙な詐術を使うものだが、そういう詐術をできるだけ割り引いて考えても、やはり登美彦氏は佐藤氏の作品を素晴らしいと思っている。佐藤氏の解説を得られたことで、登美彦氏はたいへん幸せになったという。
小型化した次男は、今週後半頃から書店に並び始める模様である。
買うか買わないかは読者の自由である。
「小型化したので、懐にもやさしく、場所も取らない」とだけ述べておく。