謹賀新年

 明けましておめでとうございます。

 そして本日、森見登美彦氏は四十二歳になった。

 誰だって生きているかぎり歳はとっていくし、「四十にして惑いまくり」というのも現代ではお馴染みの感慨で、登美彦氏が四十二歳になったからといって、世間としてはどうでもいいことであろう。しかしそれはそれとして、ここまで生きてこられたのはありがたい。コロナの暴風が地球上を吹きまくっているのだから尚更である。今年も生きていきましょう、と登美彦氏は思う。

 一月六日は登美彦氏の誕生日であると同時に、名探偵シャーロック・ホームズの誕生日である(どうして一月六日だということになったのか、その経緯は知らない)。ホームズに憧れた小学生の頃、彼と自分が同じ誕生日だと教わったときはたいへん嬉しかった。そしてホームズと出会ってから三十年、登美彦氏は現在『シャーロック・ホームズの凱旋』という作品を執筆中である。

 例によって難航しているがこれは毎度のことである。「もう俺は小説家としておしまいだ!」と思うのも毎度のことである。自信のなかった二十代の頃、いつか四十歳をすぎる頃には小説家としての腕前も上がり、もっと自信がつくだろうと期待していたが、そんな素敵な兆候はなく、腕前も自信も相変わらずのへなへなぶりである。本当に書き上げられるかどうか――それだけが問題だ。生きて新年を迎えるのと同じように、「小説が完成する」というのはありがたいことなのである。ありがたやー。

 今年はコロナのこともあって、明るいとはいえない幕開けだが、それでもきっと何かいいこともあるだろう。たとえば『シャーロック・ホームズの凱旋』が完成するとか、知らないうちに筋肉がむきむきになっているとか。

 というわけで、今年もよろしくお願いいたします。