クリスマスが目前に迫っている。
というわけで、このコミックを出版するのにピッタリの時期と言わねばならない。
原作『太陽の塔』は、今を去ること十五年前に出版された登美彦氏のデビュー作である。
今あらためて『太陽の塔』を振り返ってみると、その後に登美彦氏が書くことになるすべての小説の萌芽がここに見られる。登美彦氏は十五年をかけて、太陽の塔の足下をぐるりと一回転したようなものである。そして、『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』へと進むにつれて、登美彦氏が切り捨てていかざるを得なかった切実さや哀愁もまた、この作品にはある。
マンガ化にあたって、かしのこおりさんは、冬の京都の街を一人さまよう大学生の哀しみを、妄想や笑いの裏側にきちんと忍ばせてくれている。それゆえにこのマンガは、よくダシの染みたオデンのように、じっくりと味わえる作品なのである。冬の夜にコタツで読むべきマンガである。
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そして原作もまたヨロシクお願いいたします。