- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/09/07
- メディア: 文庫
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森見登美彦氏が散歩していると涼しい風が吹いてきた。
「空は夏、風は秋」
登美彦氏はなんとなく詩人風の顔つきをした。
そして風に吹かれながらボンヤリと空を眺めた。
この「2016年の夏」は何だったのであろうか。
それは机上を通りすぎた一瞬のマボロシであった。
奈良盆地でポカンとしがちな登美彦氏にとって、この夏はあまりにも忙しすぎたのである。じつはまだもう一つ終わらせるべき仕事が残っているのだが、もう登美彦氏の脳味噌はすりきれている。なかなか前へ進まない。
ところで九月七日、『聖なる怠け者の冒険』が小型化される。
【初版限定】
「リバーシブルカバー」&「著者のメッセージカード」付き!
メッセージカードは全部で3種類!
どれが当たるかはお楽しみ!!
とのことである。
なお、物語の内容は変わらないが、全体的にシェイプアップされている。
新聞連載版→単行本版→文庫版と化け続ける狸的な本ということでお許しください。
『聖なる怠け者の冒険』は「十周年記念作品」である。
十周年記念の最後を飾る作品『夜行』が出版されるのを待つことなく、十周年記念第一作が文庫化されるのは奇妙なことではなかろうか――そう言う人もあるだろう。
たしかにそうである!
正論である!
しかし正論どおりにいかないのが登美彦氏である。
「あと少し早く『夜行』が完成していれば、文庫化に追いつかれることもなかったのに――」
登美彦氏は無念そうに呟く。
「じつにややこしいことになってしまった。これはもう、やむを得ぬ!」