森見登美彦氏、北野勇作氏『カメリ』文庫解説を書く

 
 

カメリ (河出文庫)

カメリ (河出文庫)


 

アメリ [Blu-ray]

アメリ [Blu-ray]


 そのむかし『アメリ』という不思議な気配を漂わせる映画があった。登美彦氏は噂に聞くばかりで観たことがなく、「こんな映画でもあろうか?」と妄想を膨らますのみであった。
 で、この小説がどうして『カメリ』かというと、北野さんによれば「亀でアメリだから『カメリ』」というのである。
 「マジか」
 と登美彦氏は呟いたという。
 「そんなんでいいのか」
 これは日本ファンタジーノベル大賞の大先輩に対してたいへん失礼な言い草である。ましてや自分だって「そんなんでいいのか」という小説ばっかり書いているのだから、人のことをとやかく言えないのである。
 しかし読み進めるうちに登美彦氏は別の意味で、
 「マジか」
 と思わざるを得なかった。
 なんと壮大な小説であることか。
 のちのちと歩むカメリは世界の秘密へ迫ったりする。
 なおさらステキなことには、世界の秘密へ迫らなかったりもする。
 「こんなんがいい」
 という感想を登美彦氏は抱いたのである。
 この小説を読んだあとでは『アメリ』よりも『カメリ』のほうが断然存在感を増したようである。そもそも『アメリ』を観ていないのだからしょうがない。「亀でもカメリでもない『アメリ』とは何だね一体?」という気持ちにさえなるという。それはそれでおかしいのであるが。
 カメリの不気味な可愛さについて、森見登美彦氏は解説を書いた。
 「たいへん面白くてヘンテコな小説なので皆さん読みましょう」
 と登美彦氏は言っている。