- 作者: 北野勇作
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そのむかし『アメリ』という不思議な気配を漂わせる映画があった。登美彦氏は噂に聞くばかりで観たことがなく、「こんな映画でもあろうか?」と妄想を膨らますのみであった。
で、この小説がどうして『カメリ』かというと、北野さんによれば「亀でアメリだから『カメリ』」というのである。
「マジか」
と登美彦氏は呟いたという。
「そんなんでいいのか」
これは日本ファンタジーノベル大賞の大先輩に対してたいへん失礼な言い草である。ましてや自分だって「そんなんでいいのか」という小説ばっかり書いているのだから、人のことをとやかく言えないのである。
しかし読み進めるうちに登美彦氏は別の意味で、
「マジか」
と思わざるを得なかった。
なんと壮大な小説であることか。
のちのちと歩むカメリは世界の秘密へ迫ったりする。
なおさらステキなことには、世界の秘密へ迫らなかったりもする。
「こんなんがいい」
という感想を登美彦氏は抱いたのである。
この小説を読んだあとでは『アメリ』よりも『カメリ』のほうが断然存在感を増したようである。そもそも『アメリ』を観ていないのだからしょうがない。「亀でもカメリでもない『アメリ』とは何だね一体?」という気持ちにさえなるという。それはそれでおかしいのであるが。
カメリの不気味な可愛さについて、森見登美彦氏は解説を書いた。
「たいへん面白くてヘンテコな小説なので皆さん読みましょう」
と登美彦氏は言っている。