昨日、森見登美彦氏は雪のちらつく京都をぶらぶらしていた。
岡崎にある近代美術館へ行くためである。
なぜ行くのかというと、何か良いアイデアが浮かぶかもしれない、と思ったからである。
しかし残念なことに国立美術館はお休みであった。「事前にきちんと調べずに思いつきで出かけて行く」という、登美彦氏の意外なワイルドさゆえの失敗であった。
雪のちらつく大鳥居の下で、登美彦氏は為す術もなくションボリした。
「こうなっては何の良いアイデアも浮かばない」
登美彦氏はそう言った。
「近代美術館が閉まっているおかげで、もうワタクシは駄目である」
そう力強く断言することによって、美術館に対して責任を押しつけようという魂胆であろう。
登美彦氏はふらふらと歩いていった。
せっかく妻も書も捨てて街へ出たというのに、美術館は閉館中、雪は降る。
「つまりこれは屋内に踏みとどまれということなのだな」
登美彦氏はぶつぶつ言いながら三条大橋を渡った。
「よかろう。秘密基地に立て籠もり、雪の京都に対して宣戦布告してやろう。しかし、それにしても寒すぎる。ここはひとつ、『都そば』で紅ショウガ天のそばをすすって身体を温め、そのぬくもりを胸に秘密基地へ帰ろう。そうだそうだ、そうしよう」
と、言いながら蛸薬師のほうへ行くと、お店は立ち食い客でいっぱいであった。
「なんと……この寒さでは無理もない」
登美彦氏はいよいよションボリせざるを得なかった。
そのとき登美彦氏は「あまのね」という小さなお店を見つけた。
http://amanone-kyoto.jp/Shopinformation.html
「おお、こんなところにあるのか」
以前から噂を聞いてはいたけれども、どこにあるのか知らなかったのである。
「アニメ『有頂天家族』が好きな人はぜひどうぞ。なんだか色々なものがありますよ」
登美彦氏はそう述べている。
登美彦氏は小さな有頂天の手ぬぐいを買った。
それから近所の第一旭でラーメンを食べて帰ったようである。